花粉子の試練〜タツキの場合〜

 出演キャスト様
キャラ名 台詞数
タツキ 49
カメラ 3
若杉 31
花粉子 23
カメラマン 10


【CAST】 ・タツキ 男性 アイドル 20代前半
ツッコミ気質
アイドルの時と素の時の差がある

・若杉(ワカスギ) 性別なし マネージャー 20代後半
ボケ気質
花粉症に幼少期から苦しんでいる

・花粉子(カ・フンコ) 性別なし ? 花粉の精霊かつタツキの背後霊
ボケ気質
梅干しみたいな被り物してる存在

 ※若杉と花粉子は男女どちらでも出来るようになってるので、好きに選んでください
役名 番号 台詞
 Aスタジオ
 カメラマンと数人のスタッフがCMの撮影をしている
 スクリーンの前に立つタツキが、栄養ドリンクを片手にカメラへとウィンク
 
タツキ 001_001 元気爆発、笑顔満タン、朝からぐびっと、トージの栄養茶!
 少しの間の後、OKの声が入る
カメラ 002_001 カット―! OK、いやありがとねタツキ君、いい表情だったよ
タツキ 003_002 本当ですか? ありがとうございます
カメラ 004_002 次の仕事もお願いしちゃうかもよ
タツキ 005_003 嬉しいです、オレ頑張りますね
カメラ 006_003 うんうん。じゃあ、お疲れさまでした
タツキ 007_004 はい、お疲れさまです!
 カメラマンがスタジオを去る
 笑顔のままタツキは歩いて楽屋に入る
 扉を閉めると少し顔つきが変わるタツキ
タツキ 008_005 ふぅ
若杉 009_001 お疲れさまです、タツキ君
タツキ 010_006 おー
 椅子に座るタツキ
若杉 011_002 この頃、調子いいじゃないですか
 雰囲気ががらりと変わるタツキ
タツキ 012_007 ったりめーだろ。オレがカメラの前で輝いてない日はないからな
若杉 013_003 あーあー、素に戻るとこれですよ。楽屋だからって気を抜かないでください。ほらアイドルの仮面かぶって
タツキ 014_008 はーい、無能マネージャー。って、え?
 楽屋内にいた花粉子が喋り始める
花粉子 015_001 ほーん、すごいんですね、人間の社会って
タツキ 016_009 おい若杉、誰だこいつ
若杉 017_004 こちらは、花粉子(カ・フンコ)さんです。タツキ君の背後霊だって言うから連れてきたんです
タツキ 018_010 なんで超絶美形で、一分の隙もなく、女子にもてるこのオレに背後霊なんてついてんだよ。ありえねぇだろ
若杉 019_005 え? そうなんだ。ごめんね、私、あまりキミに興味なくて
タツキ 020_011 あんたオレのマネージャーだよな!?
 言いあう二人の意識を自分に向けさせるため咳払いをする花粉子
花粉子 021_002 おっほん! 初めましてタツキさん、あなたの背後霊こと花粉子と申します。どうぞお見知りおきを
タツキ 022_012 おいくそマネ! やばい奴じゃねーか!
若杉 023_006 大丈夫ですよ、梅干しみたいな被り物してますけど、人間でしょうから
花粉子 024_003 いえ、私は花粉の精霊です。この被り物は梅干しではなく花粉の粉を拡大したものです。しかし、この頃はスギ花粉が猛威を振るってますねぇ
 タツキは相手の出方を見ている
タツキ 025_013 で?
花粉子 026_004 そろそろタツキさんも花粉症デビューの頃だろうと思って、勧誘しにきました
若杉 027_007 かん、ゆう? ま、まさかの引き抜き?! 駄目ですよ、その子、口と態度は悪いですけどウチの看板スターなんですから!
花粉子 028_005 大丈夫ですよ、花粉症になってもアイドルは続けられますから
タツキ 029_014 なにも大丈夫じゃねぇよ! なんだよ花粉症の勧誘って、んなモンどー聞いたってやばいカルトじゃねぇか
花粉子 030_006 いやですね、うちは人間が地上に住み始める前からずっと花粉専門にしてるんですよ。なめないでください
 タツキと花粉子の心の声
タツキ 031_015 『頭がいかれてやがる。こうなったら、なんか適当に話合わせて帰す方がいいか』
花粉子 032_007 『これは、適当に話を合わせて帰ってもらおうとしてる顔ですね。だったら――ありったけの〜花粉を〜かき集め〜〜〜、ほいさ!!』
 タツキに向かって魔法みたいなのを放つ花粉子
 するとタツキは鼻がムズムズしだす
タツキ 033_016 えー、花粉子、その、な。オレは――は、はー、はーくっしょん!
若杉 034_008 うわ、タツキ君、汚い
タツキ 035_017 わりぃ。けほけほ、なんか急に鼻がムズムズしだして
 タツキと花粉子の心の声
タツキ 036_018 『花粉子の野郎、さっき変なポーズ取ってたけど、なんかオレにしやがったな』
花粉子 037_008 『やりました! これでタツキさんは花粉の虜。ぐふふふ』
 タツキが花粉症予備軍だということに、今気づきましたーな感じを装うも、ぐふふな感じが漏れている花粉子
花粉子 038_009 おっほん! ああ!! やはりタツキさんは花粉症予備軍だったんですね! それが今、開花した! さあ思いきり空気を吸い込んで、ありったけの花粉をその身に集めて、レッツ花粉症デビュー!
タツキ 039_019 誰が好き好んで花粉症なんかに――ふぇ、ふぇ――へーっくしょい!
 タツキ、鼻水が垂れる
若杉 040_009 あーあー、アイドルが鼻水ってないよー。はい、ティッシュ
 若杉が出したティッシュで鼻をかむタツキ
タツキ 041_020 あんがと、っあ゛ー! 若杉、このティッシュ硬い
若杉 042_010 そりゃま、路上でもらったやつですから
タツキ 043_021 オレの鼻が切れたらどーすんだ
若杉 044_011 またまたぁ、そんなもち肌してないくせに
タツキ 045_022 このくそ、あ、やば、また
 頑張って耐えるがくしゃみが出てしまうタツキ
タツキ 046_023 ふえ、っくしゅい!!
若杉 047_012 うーん、これだと仕事にならないなぁ。花粉子さん、どうにかなりませんか?
花粉子 048_010 と言われましても、我々も日々雌しべと合体するために頑張ってるわけですから
タツキ 049_024 黙れバケモン、花粉なんか滅んじまえ
花粉子 050_011 そんなことしたら地球上から木々が消えて、温暖化が加速し、人間なんてぐっちゃぐちゃの、べっちゃべちゃの、ぴちょんになって死ぬんですよ
タツキ 051_025 なんだよその効果音、お前、人間をなんだと思ってんだ
花粉子 052_012 え? 人間ですか? 私たちが飛ばす愛の粉を勝手に吸収した挙句、その所為で体調が悪くなったとかほざく下等生物です
 若杉の肩が震えだす
若杉 053_013 っふ、ふふふふ。静かに聞いていれば言いたい放題じゃないですか
タツキ 054_026 いやお前、静かじゃなかったけど
若杉 055_014 花粉の所為で私ら人間がどれだけ苦労しているか!
花粉子 056_013 やはりでしたか、若杉さんは花粉症ですね
若杉 057_015 ええ、三歳からです
タツキ 058_027 デビューはやすぎねぇか?
 勝手に語る若杉
若杉 059_016 あれはそう、幼き私が花畑で毎日毎晩過ごしていたある日、花粉症は発症したんです。その日から私は花粉症の奴隷となりました。奴らは毎年、決まった時季になると私の鼻を襲撃して……。っく、鼻だけならまだしも目も痒いし薬飲むと眠いし、だるいのは通常運転、時には発熱を伴って! ああ花粉が憎い!
タツキ 060_028 それ、自業自得じゃ
花粉子 061_014 あなたもいずれああなるのですよ
タツキ 062_029 ならねーよ!! はぁ……とりあえず、花粉子は警備員に連れてってもらうってことでいいか?
若杉 063_017 異論ありません
花粉子 064_015 ちょ!! なんてことするんですか! 私、あなたの背後霊なんですよ? 勝手に警備員に突き出さないでください
タツキ 065_030 勝手に背後霊になるのやめてくださ―い
 警備室に電話するタツキ
 他人相手なのでアイドルの仮面をかぶっている
タツキ 066_031 あ、もしもし、警備室ですか? すみません、楽屋に変な人が来ていて
花粉子 067_016 もし私を受け入れてくれたら、タツキさんの花粉症を和らげてあげますよ!
タツキ 068_032 は? んなモンいらね
 電話を力強く切る若杉
 若杉の目は真剣そのもの
若杉 069_018 お話、詳しく聴きましょう
タツキ 070_033 なにすんだよ、若杉。電話返せ
若杉 071_019 タツキさんは花粉症をなめすぎです。ちょっとくしゃみ出るくらいって思ってるでしょう。甘いんですよ! 鼻の噛みすぎで鼻頭は赤く腫れあがり、目だってうさぎさんか? ってくらいに充血するんですよ。そんな状態でカメラの前に立てると思ってるんですか?
タツキ 072_034 や、んなの花粉子にどうにかできるレベルのモンじゃねーだろ
若杉 073_020 いいえ、きっとできますよ。だって花粉子さんは花粉の精霊なんですから。ね!
 はてなマークを飛ばす花粉子
花粉子 074_017 ……え?
タツキ 075_035 自分で盛った設定忘れんなくそが!
花粉子 076_018 ああ、あそうでした! ええ、ええ。もちろんですよ。私は花粉の精霊かつタツキさんの背後霊ですからね、それくらい朝飯前です。そうだ取引しましょう! 私がタツキさんの傍にいることを許してくれるなら、タツキさんが仕事中、花粉症の症状を緩和させてあげます
若杉 077_021 なくすことはできないんですか?
花粉子 078_019 一度でも花粉症デビューしちゃうとその恩恵からは逃げられないんです
タツキ 079_036 お前が消えれば他の花粉も全部消滅するとかいう特典ねぇわけ?
 なんかちょっとカッコイイ感じに喋る花粉子
花粉子 080_020 っふ、たとえ私が消えたとて、新たな花粉の精霊が誕生するだけですよ
 悔しそうな若杉
若杉 081_022 っく、条件を呑むしかないようですね。やはり人類は花粉に屈する定めか
タツキ 082_037 お前はいちいちスケールでけぇよ
若杉 083_023 あなただけの問題じゃないんですよ! 花粉は私の、私の!!
花粉子 084_021 ……ふう、仕方ないですね。じゃあ私がタツキさんの背後霊であり続ける限り、若杉さんの花粉症状も軽減して差し上げます、これならどう――
 鞄から素早く書類を机に出す若杉
 営業スマイル100%
 
若杉 085_024 この度はわが社と契約の運びとなりましたこと、まことに嬉しく思います。ささ、こちらの書類に判を。なければ母印でも構いません、朱肉はこちらに
タツキ 086_038 行動はえぇよ。ん? 待てよ、じゃあオレ、ずっとこいつと一緒ってことか?
若杉 087_025 新しいアイドル路線を考えないと
タツキ 088_039 冗談キツイぜ、無理に決まってんだろ
 ノック音
カメラマン 089_001 ごめんね話し中に、入っていいかな
 びっくりするもアイドルの仮面をかぶるタツキ
 カメラマンが入ってくる
タツキ 090_040 あ、はい、どうぞ
カメラマン 091_002 さっきここの楽屋前通ったら花粉症がどうこうって聞こえてね
若杉 092_026 あああ、ああ!! それにつきましては
 小声で会話する若杉とタツキ
タツキ 093_041 どーすんだよ、そこに立ってる花粉子。あれは誰がどの角度からどう見たって不審者にしか見えねぇぞ!
若杉 094_027 タツキ君のアイドルオーラで吹き飛ばしてください
タツキ 095_042 無理いうな!
カメラマン 096_003 でね、次の仕事、花粉症対策グッズとかどうかなって
タツキ 097_043 あ、はい、もちろんです! 喜んで
カメラマン 098_004 そう? じゃあ上に話通しておくね
タツキ 099_044 はい、いつもありがとうございます。あ、の、こいつなんですけど
カメラマン 100_005 こいつ? 若杉マネージャーのこと?
タツキ 101_045 いえ、オレの横にいる被り物した
カメラマン 102_006 ? ここには僕と君と若杉マネージャーしかいないけど?
若杉 103_028 ……え?
タツキ 104_046 ……え?
カメラマン 105_007 なんだい、ドッキリしようったってそうはいかないよ
 小声で花粉子に話しかけるタツキ
タツキ 106_047 おいどうなってんだ花粉子
花粉子 107_022 おそらくですが、あの人、花粉症じゃないんですよ。花粉の恩恵を受けてない人に私は見えませんから
タツキ 108_048 お前のは恩恵じゃなく災害だ!
カメラマン 109_008 わわ、どうしたんだいタツキくん、大声で
若杉 110_029 すみません! 新しい役作りをしていたもので
カメラマン 111_009 そうなんだ、アイドルも大変だね
 カメラマンの電話が鳴る
カメラマン 112_010 あ、やばい電話だ。じゃあ僕はこれで
 カメラマンが去る
若杉 113_030 花粉症じゃない人には見えないって
タツキ 114_049 マジかよ。お前マジで人外だったのか?
 胸を張る花粉子
花粉子 115_023 最初からそう言ってるじゃないですか! じゃあこれから末永くよろしくお願いしますね
 若杉のモノローグ
若杉 116_031 『その後、タツキくんの傍には梅干しの被り物をした変なモノがいると言い張るファンと、そんなものはいないと騒ぐファンが戦争のような口論をしたとかしなかったとか、おしまい』
END


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