霊とか見えないので

 出演キャスト様
キャラ名 台詞数
怜美 68
72
執事 25
6
4


16歳 男子 本庄新(ほんじょう あらた)
 何故か幽体になってしまった高校1年生。
 どこか憎めない性格。諦めない心の持ち主で、太陽属性。
 女の子も大好きで、口説いては振られている。

18歳 女子 高松怜美(たかまつ れみ)
 何故か新が見える高校3年生。
 冷たい性格。友達はいないたちで、闇属性。
 学園理事長の悪事を知るため、孫である生徒会長に近づく予定。

役名 番号 台詞
〇通学路
怜美 001_001 私が彼に出会ったのは、雨の日のことだった。あれは、身をつき刺すような寒さが印象的な日の出来事。空から降る雨粒が、コンクリートをタンタンと軽快に叩いていた
 雨に濡れた新が家のブロック塀に寄りかかって座っている
 傘を持った怜美が近づいていく
怜美 002_002 もし、そこの人。もし、大丈夫ですか?
003_001 (眠っていたので、ゆっくりと顔を上げる)う、ううん? (きょろきょろとあたりを見て他に誰もいないので、彼女が自分を見ているのではないかと考える)あれ、君は俺が見えるのかな? (諦めたように)はは、そんなはずないのにな
怜美 004_003 見えていますが?
005_002 だよな、見えて――見えてる!? ええ、嘘!!
怜美 006_004 (顔をしかめる)声の音量を考えください。近所迷惑です
007_003 だって、今まで誰にも見えなくて。え? 本当に? 本当に見えてるのか? 俺のこと
怜美 008_005 そう言ったはずですが。はぁ、その様子ですと問題なさそうですね。では、私はこれで失礼
 歩き出す怜美
 慌てて立ち上がり(ふらつくが)ついて行く新
009_004 ま、待った、待ってくれ! 俺、困ってて。君以外の誰にも見てもらえないんだ
怜美 010_006 ご愁傷様です。路上で倒れたふりなど、悪趣味なことをなさっているからでしょう
011_005 違うんだって。あれは、誰にも認識してもらえないから不貞腐れてただけで。ほら俺、体透けてないか? 幽霊みたいに
 怜美、新を見る
怜美 012_007 そのようですね。なるほど、人ならざる者でしたか、除霊はできないので悪しからず
013_006 え? 俺、幽霊なの? 嘘だろ。なんでそんなことになってるんだ。待て待て、よく思い出せ。昨日は学校に行って、英語の小テストで64点取って、体育で怪我して、保健室にいたかわいい子とお近づきになって。夜はバイトで、家帰って寝て――起きたら幽霊に? (怜美が遠くに行っているので焦る)ちょ、なんで置いてくんだよ
怜美 014_008 なぜついてくるんです。警察を呼びますよ。貴方の身の上話を聞く必要が私にあるとでも?
015_007 警察呼んでもきっと俺、そいつらに見えないぞ? 今まで会った連中全員そうだったし。君だけは俺が見えるんだ。お願いだから助けてくれ! この通りだから
怜美 016_009 (溜息)……助けるとは具体的に何をしてほしいのです?
017_008 助けてくれるんだな!
怜美 018_010 話を聞いているだけです。早合点はやめていただけますか
019_009 うぐ。具体的ってーと、えっと、幽体から元に戻りたい。その手伝いをしてほしいんだけど
怜美 020_011 霊媒師を紹介しろと、そういうことですか
021_010 そう、なるのかな?
怜美 022_012 霊媒師を紹介したら、もう私につき纏わないと約束できますか?
023_011 それは、どうだろう。いまのところ俺の声を聴けるのも、姿が見えるの君だけだから。霊媒師に俺が見えなかった場合は、君をまた頼るかも
怜美 024_013 お伺いしますが、貴方を助けて、私にどんな利があるのです?
025_012 あー、えと、はは。ない、かな
怜美 026_014 貴方は私以外には見えない幽霊。おそらくどこかで死んだのでしょう。大人しく神の世とやらから迎えがくるのを待ち、成仏してはどうなのです
027_013 そんな冷たいことを言わないでくれよー
怜美 028_015 おや、私が優しい人間だとでも思ったのですか?
029_014 優しくない人は、倒れてる人間に声をかけたりしないだろう?
怜美 030_016 今日のように寒い雨の日に、路上で倒れていては最悪、命に関わります。私が見過ごしたことで、通学路に死体ができては寝覚めが悪いではありませんか
031_015 そういえばその服、猫沢(ねこざわ)高のだよな? 俺もそこの生徒、一年の本庄新な
怜美 032_017 年上には敬語でしゃべってはいかがです。私は三年ですので
033_016 っげ、先輩だったのかよ。あ
 怜美の家に着く
 大きな門構えに驚く新
034_017 え、なにこの巨大な屋敷。まさか、ここが君の家とか言わないよな?
怜美 035_018 ええ、私の家です。それでは本庄さん、私はこれで。生きていたのなら、明日、寝坊しないように登校してくださいね
036_018 やだー! 待って待って、置いてかないで。お願いです先輩、俺を助けて
怜美 037_019 ちょっと、放してください!
038_019 ああ、触れる。あったかい! 女神様って崇めますから、俺のこれからの一生全部ささげてもいいから、元に戻るの手伝ってくださいー!!
 土下座をする新。
怜美 039_020 ……貴方、自尊心というものはないんですか?
040_020 (きりっと)そんなものあったって、今この場じゃ役に立たない! から捨てました
怜美 041_021 ……ふふ、なるほど。いいでしょう、気が変わりました。霊媒師を探すまでなら手を貸してあげます
042_021 女神様!!
怜美 043_022 次、私をそのようなふざけた呼称で呼べば、除霊師を呼びます
044_022 はい先輩、肝に銘じます!!
〇怜美の部屋
怜美 045_023 本当に誰も、本庄さんのことが見えないんですね
046_023 でしょう? そうでしょ? いきなりみんな俺のこと無視するし、体は透けてるし、本気で泣きかけてたんです。先輩が声かけてくれなかったら俺、きっとあのまま
怜美 047_024 私には触れたようですが、物には触れられるんですか?
048_024 うーんと、あ、無理みたいです。ほら
 テーブルや椅子を触ろうとするが手がすり抜ける
049_025 ね? 手がすり抜けるんです。だから今なら、壁抜けだってできちゃいます
怜美 050_025 不用意に他室に入らないでくださいね。元に戻れた時、生きて帰せなくなりますから
051_026 なにその脅し。やめてくださいよぉ、怖がらせるのは
怜美 052_026 あいにくと当家には、よそ様にお見せできない、あれやこれがあるのです。もし勝手に覗こうものなら
053_027 しません! しませんから。怜美先輩がいいっていう部屋にしか入りません
怜美 054_027 その言葉が本当ならいいですけど
055_028 嘘なんかつきませんよ
怜美 056_028 どうだか。……さて、霊媒師をご所望とのことでしたが、貴方が霊体だというのなら、本体が家にあるのでしょう? 体を重ねるだけで戻れたりしませんか?
057_029 おー、なるほど。盲点でした。そうですね、じゃあ一回家に帰ってみます
怜美 058_029 ええ、どうぞ
 新が去る
 執事が部屋に入ってくる
執事 059_001 失礼いたします。怜美様、紅茶をお持ちしました
怜美 060_030 紅茶を? 頼んでいませんが
執事 061_002 話し声が聞こえましたので、ご学友を招かれているのではと
怜美 062_031 学友? ふふ、そのような相手が私にいるとでも
執事 063_003 学び舎で友を得るのは良いことでございますよ
怜美 064_032 必要ありません。下がってください
執事 065_004 ……紅茶だけでもお飲みになりませんか? 外はお寒くありましたでしょう
怜美 066_033 小金井さん、気遣いは無用です。その紅茶も
執事 067_005 捨てますか?
怜美 068_034 (溜息)……そこに置いていてください
執事 069_006 (笑顔で)はい、畏まりました
〇本庄家
070_030 帰ったぞー。新兄ちゃんが帰ったぞー。おーい誰かいないかー、俺の声が聞こえないかー。って聞こえないんだよなー
 妹と弟が喋っている
071_001 てかお兄、ほんとどこ行ったの? いつからいないの?
072_001 最後に見たのは昨日の風呂上がりだね。朝はいなかったし
073_002 父さんも母さんものんきに、どうせ彼女のところか友達のところだろって言ってたけど
074_031 あら? 俺の本体家にないの? まじか
075_003 家出とからならどうすんのよ
076_002 心配しすぎだよ。そのうちひょうっこり帰ってくるって
077_004 そうかなぁ
078_003 そうそう
079_032 おお、妹よ。そんなに兄ちゃんのことを思ってくれるなんて。なんていい子なんだ
080_005 貸した1500円、今日こそ徴収しようと思ってたのに
081_004 利子でもつけとけば?
082_006 そうする
083_033 ……はは、んなことだろうと思ったよ。でも俺の体がないって、どういうことだ? うーん、悩んでも分からないか。怜美先輩のとこかーえろ
〇怜美の部屋
 驚かせようと壁からいきなり出てくる新
084_034 んー、わ!!
怜美 085_035 !? 本庄さん、なにを
086_035 ただいま怜美先輩。いきなり人か壁から出てきたんだから、もっと驚いてくれればいいのに
怜美 087_036 十分に驚きました。つい筆記具で貴方の顔面を刺すところでしたよ。私が思いとどまってよかったですね
088_036 は、ははは。ほんとに、ね。あ、家の方、見てきたんですけど、俺の体なかったです
怜美 089_037 どういうことです?
090_037 や、俺にもさっぱり
怜美 091_038 昨日未明、貴方の部屋に強盗が押し入り、本庄新を殺害、さらには死体を回収してばらして売った
092_038 え? 
怜美 093_039 ゆえに本庄さんは現世への未練を残し、地上を彷徨っている
094_039 あのー、それはどういう?
怜美 095_040 貴方の身に起きたことを私なりに推測して、立てた仮説です。貴方はすでに死んでいると
096_040 やめてくださいよ。勝手に殺さないで! 俺、殺された記憶なんてないですから
怜美 097_041 どこまで記憶があるんです?
098_041 昨日、寝た時までです。1時くらいかな
怜美 099_042 次の記憶は?
100_042 学校の教室で起きました! 3限の国語の授業中で、芥川龍之介の羅生門をしてました。あと、俺は今日、無断休校してるらしいです!
怜美 101_043 分かりませんね。とりあえず、近隣で有名な霊媒師をリストアップしておきました。好きな人を選んでください
 ファイルを渡されるが物がすり抜けると思い出して首を振る新
102_043 先輩。俺、物持てませんよ
怜美 103_044 そうでしたね。めんどうな
104_044 (上機嫌に甘える)ページめくってくーださーい。読み聞かせてくーださーい
怜美 105_045 焼き捨ててしまいましょうか、このリスト
106_045 あああ! 駄目、駄目駄目、後輩虐め、断固反対です!!
怜美 107_046 ページは開いてあげますから、あとは自分で見てください
108_046 うあーい
怜美 109_047 ところで本庄さん、食事はできるんですか?
110_047 あーどうなんだろう。食べれるのかな
怜美 111_048 机の上の小箱に飴が入っていますから。舐めてみてはどうです?
112_048 よーし。じゃあ先輩、あーんしてください
怜美 113_049 なぜ私がそのようなことを
114_049 だって俺、持てませんから。あーんしてください。あー
 口を開けて待つ新に戸惑う怜美
 ちょっと不機嫌そうに飴をつまんで口元に近づける
怜美 115_050 なぜ私がこんなことを
116_050 はひゃふー(※口を開いた状態でしゃべります)
怜美 117_051 動かないでください。目測がずれます
118_051 ふふふ。かぷ。んー、甘い。美味しいです。ありがとうございます
怜美 119_052 どうやら食べれるようですね。では食事をこの部屋に運びますから
120_052 食べさせてくれるんですね! やったー
怜美 121_053 ……今日は断食しておいてください
122_053 そんなー!!
〇怜美の部屋
 語っている新
123_054 怜美先輩に出会って数日後、俺はというと霊媒師を訪ねていた。けれども、肝心の霊媒師に俺の姿は――見えなかった。太陽がまぶしく輝くこの町で、俺は誰にも見つけてもらえず、永遠を彷徨うのだろうか
 椅子に腰かけ本を読んでいる怜美が興味なさそうにしゃべる
怜美 124_054 何を語っているんです? 煩いですよ
125_055 だってだって、霊媒師のお姉さん、俺のこと見えなかったんですよ!? もうどうしたらいいんだよ、戻れないのかなぁ
怜美 126_055 私が手伝うのは霊媒師を紹介するまでなので、あとはご自分でどうぞ。出ていってくださって構いませんよ
127_056 冷たいです、先輩。氷みたいに冷たいです
怜美 128_056 あいにくと、これが私ですので
 ノックオン
執事 129_007 お嬢様、どなたがいらっしゃているのですか?
怜美 130_057 誰もいません。私一人です
執事 131_008 しかし少年の声が。入ってもいいでしょうか
怜美 132_058 少年の声? (小声)まさか本庄さんの声が聞こてえいる? 小金井さん、入ってください
執事 133_009 では失礼いたします
 小金井が部屋に入ってきて新を見る
執事 134_010 っぁ
135_057 あら? 執事さんと目が合った? んな馬鹿なわけないか、どうせこの人も俺のこと見えてない
 殺意を放って怒る執事
執事 136_011 お嬢様の部屋に入り込むとは、貴様、死にたいようだな
137_058 え? あのー、もしかして
執事 138_012 どこから入ったかは知らんが、生きて帰れると思うなよ小僧
139_059 わ、わ!? ちょ、タンマ。何々この人、怖いんですけど。先輩
怜美 140_059 小金井さん、ここに何か見えますか?
執事 141_013 汚らしい小僧が見えます。お目汚しかと。早急に排除いたしますので
怜美 142_060 よかったですね、私以外の方にも見えるようになったようですよ
143_060 見えるのは嬉しいけど、明らかに執事さん怒ってるよね。なんで? 
怜美 144_061 私の部屋に本条さんがいるからじゃないですか?
145_061 えっと、あの、俺、本庄新って言います。怜美先輩の後輩で、猫沢高の一年です。悪いことは何もしてないので、睨まないでもらえると嬉しい、というか
執事 146_014 後輩? 確かにその制服は猫沢学院高校の物。だが、屋敷の警備をすり抜け、お嬢様の部屋に入り込んだ時点で、お前は私の敵以外の何物でもない
147_062 お願い先輩、何でもするから執事さんを止めて
怜美 148_062 貴方は、自分の残りの一生を全て私に捧げたんですよね? これ以上、貴方から貰うものなどないのでは?
149_063 女神さまの意地悪!!
怜美 150_063 その呼び方はやめてくださいと言いましたよ
執事 151_015 ふむ。つまり小僧、貴様は怜美お嬢様を女神と崇めたたえた崇拝者、つまりは下僕ということか
152_064 いや、後輩ですけど
執事 153_016 下僕ならば冗長酌量の余地はあるが
154_065 下僕です。間違いなく。俺はお嬢様の犬です
執事 155_017 なるほど。理解しました、お嬢様
怜美 156_064 (額を押さえて)何を理解したか知りませんが、違いますから
執事 157_018 この小金井の預かり知らぬところで、まさか下僕を従わせておられるとは。感無量にございます
怜美 158_065 違います。本庄さんはただの幽霊です
執事 159_019 そうでしょうとも、ただの幽霊――幽霊!?
 ―間―
160_066 と、言うわけなんですよ。いやー、嬉しいな、先輩以外にも俺のこと見えてる人がいたなんて
執事 161_020 にわかには信じ難い話ですが
怜美 162_066 本当みたいですよ。昨日メイドが部屋に来た時にも本庄さんはこの部屋にいましたから
執事 163_021 私とお嬢様にしか見えない、ですか。それはそうと小僧
164_067 あれ、まだ小僧呼び? なんですか
執事 165_022 昨日からここにいたとお嬢様はおっしゃられたが、貴様まさかこの部屋で一夜を明かしてはいないな?
166_068 えーどうだろーなー
執事 167_023 お嬢様、貴方様の下僕を始末する許可をこの小金井に
168_069 うわー!? いないです、出ていきましたって。廊下で寝たから、ちゃんと
怜美 169_067 貴方には客室を教えたはずですが
170_070 や、だってあんまり離れるの怖かったから。怜美先輩がいなくなったら俺、本当に誰にも気づいてもらえないし
執事 171_024 今日からは私の部屋にいろ。無許可でお嬢様の部屋に入ることは許さん
172_071 今日以降もこの屋敷にいていいってことですか? やったー!
怜美 173_068 小金井さん、本庄さんは今日にも出ていきますから、世話を焼く必要はありません
執事 174_025 いけませんよ、お嬢様、拾ったペットには責任を持つべきです
175_072 あ、下僕からペットに格上げされた。


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