役名 |
番号 |
台詞 |
○駅前 |
仕事帰り、疲れた女性が駅の改札を通ってくる |
女性 |
001_001 |
あー、疲れた。仕事配分、絶対おかしい。嫌われてるのは分かるけどさ、お局さま、やりすぎにも程があるって。ほかの人は見て見ぬフリだし。あーも、どうしてぺーぺーの私が―― |
少年を発見 |
女性 |
002_002 |
(見ほれて)……綺麗。え、外国の子? |
少年が気づく |
少年 |
003_001 |
……? |
女性 |
004_003 |
あ |
少年が近づいてくる |
少年 |
005_002 |
なに、お姉さん。僕のことじぃ……っと見て。なんか、僕……変? |
女性 |
006_004 |
あや、見慣れない姿だったからつい |
少年 |
007_003 |
確かにこの国では、僕みたいな見た目の奴は珍しいかもしれないけど |
女性 |
008_005 |
あー、はは。うん、ごめんね。ぶしつけだったね |
少年 |
009_004 |
ぶしつけじゃないけど |
女性 |
010_006 |
ないけど? |
少年 |
011_005 |
あんまり見つめられると……その、恥ずかしいから……やめて…くれない…? |
女性 |
012_007 |
(真顔で)可愛いし |
少年 |
013_006 |
(むっとして)可愛くない |
女性 |
014_008 |
いや、絶対的に可愛いよ。神さまの子だって紹介されたら頷くから |
少年 |
015_007 |
(笑う)なにそれ。人はみな、神の子だよ |
女性 |
016_009 |
残念。私の家、仏教だから |
少年 |
017_008 |
キリストの聖誕祭を祝うのに? |
女性 |
018_010 |
日本人はそういう生き物なの |
少年 |
019_009 |
(笑う)もう、なにそれ |
女性 |
020_011 |
綺麗なうえに可愛いなんて、はぁ。神さま、平等に人を作ってよ |
少年 |
021_010 |
僕、カッコいいって言われたいんだけど |
女性 |
022_012 |
(笑う)可愛いから、ダメ。誰か待ってるの? もういい時間だよ |
少年 |
023_011 |
気にしなくていいよ。お姉さんは仕事帰り? お疲れさま |
女性 |
024_013 |
ありがとう |
少年 |
025_012 |
ぁ――。じゃね |
少年は歩き出す |
女性 |
026_014 |
え、待って。ね、どこに行くの? |
少年 |
027_013 |
お姉さん、暇なんだ |
女性 |
028_015 |
帰ってコンビニ弁当とビール飲むしかないからね |
少年 |
029_014 |
カレシさんは? いないの? |
女性 |
030_016 |
いたら残業なんて投げ捨てて帰ってる。ね、本当にこの時間に1人だと補導されるよ |
少年 |
031_015 |
僕、日本人じゃないし |
女性 |
032_017 |
でも、危ない人に連れ去られる可能性だってあるよ。いきなり知らない人に襲いかかられたり |
少年 |
033_016 |
お姉さんみたいな? |
女性 |
034_018 |
私は! 危険じゃありません!! |
少年は歩いていってしまう |
女性 |
035_019 |
あ、ねぇって |
少年 |
036_017 |
好奇心旺盛なのは可愛いけど、簡単についてきちゃダメだよ、お姉さん |
女性 |
037_020 |
君がどこに行くのか教えてくれて、納得できれば帰るから |
少年 |
038_018 |
納得できなければ? |
女性 |
039_021 |
ついて行こうかな |
少年 |
040_019 |
(ため息)――ま、いいけど。来るならおいでよ |
女性 |
041_022 |
どこに行くのか教えてくれないの? |
少年 |
042_020 |
ついてくるんでしょ。説明するより見たほうが早い |
女性 |
043_023 |
不安なんだけど |
少年 |
044_021 |
じゃあ帰る? |
女性 |
045_024 |
帰りません |
少年 |
046_022 |
変なお姉さん |
○屋敷前 |
少年 |
047_023 |
ついたよ。こっち |
女性 |
048_025 |
普通の家、よりは大きいけど、お屋敷? しかもここ、幽霊屋敷で有名な |
少年 |
049_024 |
(少し遠くから)おねーさーん |
女性 |
050_026 |
わ、置いてかないで! |
少年 |
051_025 |
慌てなくても大丈夫だよ。もう置いていかないから |
女性 |
052_027 |
……ねぇ、君さ。もしかして――幽霊? |
少年 |
053_026 |
お姉さんに僕がそう見えるのなら、そうかもね |
女性 |
054_028 |
えー |
玄関扉を開ける |
女性 |
055_029 |
(小声で)お、じゃましまーす。あ、案外普通。ちょっと寒いけど。冷房? |
少年 |
056_027 |
うん、保存状態が悪くなるから |
女性 |
057_030 |
なんの保存? や、やっぱり幽霊! |
少年 |
058_028 |
お姉さん幽霊好きなの? 残念だけど、幽霊は保存してないな |
女性 |
059_031 |
好きじゃないから! |
少年 |
060_029 |
そう? こっち |
女性 |
061_032 |
待って |
○廊下 |
女性 |
062_033 |
ワインセラーとかってこんな温度だよね。ワイン貯蔵してる? |
少年 |
063_030 |
どうだろう。割れたものならあるかもだけど |
女性 |
064_034 |
割れたワインって、ただの瓶、もしくは壊れた樽だよね |
少年 |
065_031 |
うん、そっちじゃないと価値ないしね |
女性 |
066_035 |
えー。ワインは中身が入ってこそだよ? |
少年 |
067_032 |
そうかな |
女性 |
068_036 |
そうです |
少年 |
069_033 |
……ねぇお姉さん、本当についてくるんだね? |
女性 |
070_037 |
ここまで来て引き返すってのはないかな |
少年 |
071_034 |
そっか。じゃあ開けるね |
○部屋 |
少年 |
072_035 |
はいどうぞ。ショーケースには触れちゃダメだよ |
女性 |
073_038 |
暗くてなにも見えないんだけど |
少年 |
074_036 |
電気つけるね |
電気がつく |
女性 |
075_039 |
こ、これは!! ――石ころとか、なにかのトロフィー? あと焼けた服に、指輪とか、めがね? |
少年 |
076_037 |
博士のコレクションだよ |
女性 |
077_040 |
博士? |
少年 |
078_038 |
この屋敷の持ち主で、展示会場の主催者 |
女性 |
079_041 |
ってことはこれ、展示品? え、でもこれ、どう見てもガラクタ |
少年 |
080_039 |
そうだね。価値なんてないのかもしれない、普通の人には |
女性 |
081_042 |
君には価値があるものなの? |
少年 |
082_040 |
どうだろう。考えたことないな |
女性 |
083_043 |
ふーん。あれ? ね、あのトロフィー欠けてるよ。それになにか汚れて |
少年 |
084_041 |
欠けたり、汚れた常態じゃないと、無価値なんだって |
女性 |
085_044 |
汚れたほうが価値あるって、そんな――え、あの汚れ、どす黒く変色してるけど、まさか |
少年 |
086_042 |
うん? なんの汚れだろうね |
女性 |
087_045 |
じゃあ焼けた服って――あの服を着てた人は、どこかにいる? |
少年 |
088_043 |
魂は我らが主の元に、かな。善行を積んでいればだけど |
女性 |
089_046 |
肉体は? |
少年 |
090_044 |
埋められたんじゃない? 日本人って土に埋めるんでしょ、人を |
女性 |
091_047 |
生きてる人を埋めたりしないよ |
少年 |
092_045 |
変なお姉さん、生きてないから埋められたんだよ |
女性 |
093_048 |
……殺したの? |
少年 |
094_046 |
え? あ、もしかして勘違いしてる? 違うよ、僕らは人を殺したりしてないから |
女性 |
095_049 |
でも、コレクションって全部、死んだ人の原因とか、遺品とかだよね |
少年 |
096_047 |
(笑う)博士がそういうの好きで |
女性 |
097_050 |
笑って言うことかな!? |
少年 |
098_048 |
僕が頼まれてるのは、コレクションになりそうなものを持ち帰ってくること |
女性 |
099_051 |
私はコレクションにならないよ? 生きてるし |
少年 |
100_049 |
生きてる人をショーケースに入れたりしないって。もう、怖がりだね |
女性 |
101_052 |
あ、あはは。そうだよね |
少年 |
102_050 |
だからさ。――頂戴 |
女性 |
103_053 |
……なにを? |
少年 |
104_051 |
持ってるよね、お姉さん。ショーケースに飾れるコレクション。そのポケットに |
女性 |
105_054 |
! |
少年 |
106_052 |
大丈夫だよ。警察に言ったりしないし、証拠も隠滅できるよ。なんなら着替えていく? 服も、血の匂いがついてたら博士喜ぶから |
女性 |
107_055 |
……私の所為じゃない、から |
少年 |
108_053 |
人を殺す人って、だいたいがそんなこと言うよね |
女性 |
109_056 |
お局さまが、アイツが悪いの! アイツが私にばかり! |
少年 |
110_054 |
血気立たないで。僕らはただ、ポケットの中身が欲しいだけだから。お姉さんがどんな理由で誰を殺めてきたかとかには興味ないんだ |
女性 |
111_057 |
自分で処分するから |
少年 |
112_055 |
もったいないよ。ね、ここに展示してよ。暇なときに見にこれるし |
女性 |
113_058 |
見て楽しいものじゃない |
少年 |
114_056 |
今はね |
女性 |
115_059 |
……本当に、警察に行かない? |
少年 |
116_057 |
行かないよ。行く理由がないから |
女性 |
117_060 |
…………だったら |
扉が閉まる |
○駅前 後日 |
仕事帰り、元気な様子で女性が駅の改札を通ってくる |
女性 |
118_061 |
あー、きっかり定時退社。素晴らしい。うーん、スポーツジムにでも行こうかな。あ |
少年を発見 |
女性 |
119_062 |
やっぱり、綺麗 |
少年 |
120_058 |
あれ、また会ったね。お姉さん |
女性 |
121_063 |
うん。久しぶり |
少年 |
122_059 |
元気にしてた? |
女性 |
123_064 |
元気だったよ。君は? |
少年 |
124_060 |
僕? さぁ、どうだろう |
女性 |
125_065 |
あの、さ |
少年 |
126_061 |
新しい展示品増えたけど、見に来る? |
女性 |
127_066 |
……増えたの? |
少年 |
128_062 |
増えるよ。当たり前じゃない |
女性 |
129_067 |
そっか、そうだね |
少年 |
130_063 |
見にくる? |
女性 |
131_068 |
暇だし、行こうかな。ビール出たりしない? |
少年 |
132_064 |
しない。館内飲食厳禁だよ |
女性 |
133_069 |
ちぇー |
END |