役名 |
番号 |
台詞 |
●ガレージ |
車の中で何かを探す達治 |
円 |
001_001 |
達治さん、温室に行かないんですか |
達治 |
002_001 |
あそこには薬が撒いてあるから、長時間いたら寝ちまう |
円 |
003_002 |
えええ!!? |
達治 |
004_002 |
短時間ならいいんだが。と、あったあった。ビニール袋。ほい、円ちゃん |
円 |
005_003 |
これで息しろってことですか |
達治 |
006_003 |
ああ |
円 |
007_004 |
達治さんは、どうして温室に薬が撒いてあること、知ってるんです? |
達治 |
008_004 |
……俺が館に来たのは、人が行方不明になるって噂が本当かどうか探るため。ってのは話したよな? |
円 |
009_005 |
はい |
達治 |
010_005 |
俺のダチがな、帰ってこなかったんだよ。この雪山から。だから探りに入った |
円 |
011_006 |
そのお友達は、男の人ですか |
達治 |
012_006 |
ああ。あいつは、いい男だったよ |
円 |
013_007 |
ここの人たちを、信じてたんですね |
達治 |
014_007 |
まぁな。でもま、俺のダチがここで死んだとは限らねぇし。もしかしたら、雪山でカチコチになってんのかも(円を見て笑いを止める)……情けねぇよな。信じて、いたかったんだ。ここの人たちのこと。凄く、いい人たちだったから |
円 |
015_008 |
わたしもそう思います |
達治 |
016_008 |
でも、人殺しは犯罪だ。どんな理由があっても、しちゃ駄目だ |
円 |
017_009 |
はい |
達治 |
018_009 |
行こう、円ちゃん |
●地下 |
睦 |
019_001 |
さつき、縄くらい引きちぎれないの? 男でしょ |
さつき |
020_001 |
無茶言わないで。それを言うならそっちだって、拘束具、壊したら? |
睦 |
021_002 |
あたしみたいな、か弱い女子に向かって、なんてこと言うの! |
さつき |
022_002 |
睦さんこそ! あ――姉さん! |
見やると車椅子で去ったはずの星羅が歩いてきた |
ゆらゆらと揺れながら、それでもさつきの方に近寄っている |
さつき |
023_003 |
姉さん? |
星羅 |
024_001 |
……サ、ツ、キ? |
さつき |
025_004 |
そうだよ。僕だよ! 姉さん、帰ろう。一緒に |
星羅 |
026_002 |
私は、セイ、ラ? |
さつき |
027_005 |
違うよ! 姉さんは草間なつき。草間家の長女で、僕の姉で、K大学でピアノ科専攻してて |
星羅 |
028_003 |
ナツ、キ? |
さつき |
029_006 |
そう! ね、この縄ほどける? |
星羅 |
030_004 |
(少しだけ、普通に話し出す)ええ、できる、わ |
星羅は縄をほどく |
睦 |
031_003 |
あたしのも、ほどいて |
さつき |
032_007 |
待ってて。いま――よし、できた! |
睦 |
033_004 |
まったく。長時間座ってたから、お尻が痛いわ |
さつき |
034_008 |
さ、姉さん。帰ろう |
物音 |
睦 |
035_005 |
だれ?! |
靖幸 |
036_001 |
姉さん。どこに行ってたんだ、探したよ |
さつき |
037_009 |
本間! この人は僕の姉さんだ! |
靖幸 |
038_002 |
なにを言っているんだい、さつき君。その人は僕の姉、本間星羅。ほら姉さん、寝ていないと駄目だよ。怪我も治ってないんだ |
睦 |
039_006 |
本間さんの姉が崖から落ちたってことが、ずっと疑問だったの。地元の人なのに、崖を知らないの? って。でも判ったわ。洗脳したけれど、なつきさんの意識が表に出てきてしまって、家に帰ろうとして事故を起こしたんじゃない? |
靖幸 |
040_003 |
違うよ、睦さん。その人は僕の姉だ。僕の姉なんだ |
睦 |
041_007 |
貴方の姉、本間星羅は死んでいるわ |
靖幸 |
042_004 |
死んでなんかいないさ! 約束をしたんだ。元気になったら雪ウサギを作ろうって。死んでない。死んでない、死んでないんだ!! |
睦 |
043_008 |
眼を背けるのはいい加減にして。他の人を洗脳して、この場に留めるなんて最低な行為よ |
靖幸 |
044_005 |
違う。洗脳じゃない。姉さんなんだ。私の私の…わた、しの |
靖幸は蹲ってしまう |
そんな靖幸を庇うように結香が飛び出してくる |
結香 |
045_001 |
止めて! 御方様は、なにも、知らないの! |
睦 |
046_009 |
結香ちゃん? |
結香 |
047_002 |
全部自分と、巽さんがしてるの。御方様は、知らないの。もう判らないの。正しいことも、そうじゃないことも |
さつき |
048_010 |
壊れてしまったの? |
結香 |
049_003 |
……遭難者なんて、助けなければよかった。見殺しにしてしまえば、よかった。そうすれば、星羅様は、ずっと御方様と笑っていたのに |
靖幸 |
050_006 |
結香くん? |
結香 |
051_004 |
御方様、お体にさわります。部屋に行きましょう。お薬を飲んで? |
睦 |
052_010 |
その薬で、また靖幸さんを騙すの |
結香 |
053_005 |
だったら、泣き狂う御方様を、どうすればいいの? 壊れてしまえば、いいと言うの? |
睦 |
054_011 |
あなた達が支えれば! |
結香 |
055_006 |
支えられたら! どれだけよかったか。どんな言葉も、どんな行為も、御方様には届かない。御方様の唯一は星羅様で、それ以外は必要ないだなんて、知りたくなかった! |
さつき |
056_011 |
君たちの事情なんて知らない。けど僕の姉さんを巻き込むのはやめて。ね、なつき姉さん ……姉さん? |
星羅 |
057_005 |
ヤス、ユキ |
靖幸 |
058_007 |
! 姉さん!? |
さつき |
059_012 |
違うよ、なつき姉さん。なつき姉さんは僕の |
星羅 |
060_006 |
……ごめんね。さつき。でも、私、この人を、放ってはおけないの |
さつき |
061_013 |
どう、して? どうして! 帰ろうよ、一緒に家に!! |
星羅 |
062_007 |
帰らないわ。私はここに残る。だから大丈夫よ、靖幸 |
靖幸 |
063_008 |
ああ! 姉さん、姉さん。やはり、貴方は私の姉さんですよね |
さつき |
064_014 |
やだ! 待って! |
睦 |
065_012 |
このままここに残れば、その怪我で死にますよ、なつきさん。ここの人たちは貴女を医者に見せることはない |
星羅 |
066_008 |
いいの。この命尽きるまで、私は靖幸の傍にいるから |
睦 |
067_013 |
……それは同情ですか? |
星羅 |
068_009 |
愛情、と言ってくれるかしら。ごめんなさい、さつき。こんな姉で、ごめんね |
さつき |
069_015 |
僕を捨てるの? |
星羅 |
070_010 |
そうね。そうなるかもしれないわ。お母さんには伝えないでね |
さつき |
071_016 |
……どうしても、駄目なの? |
星羅 |
072_011 |
この人と、一緒にいたいの |
靖幸 |
073_009 |
私と一緒にいてくれるのかい |
星羅 |
074_012 |
ええ、ずっと一緒にいましょうね |
結香 |
075_007 |
……よかったですね。御方様 |
靖幸 |
076_010 |
ああ。結香くん。こんなに嬉しい日は久しぶりだ |
結香 |
077_008 |
……出口はそっち。地上に出れるから。帰って、二度と、こないで |
睦 |
078_014 |
警察に言うわ。あなた達のこと |
結香 |
079_009 |
好きに、したらいいと、思う |
睦 |
080_015 |
さつき。行くわよ |
さつき |
081_017 |
僕は、残る |
睦 |
082_016 |
馬鹿言わないの |
さつき |
083_018 |
姉さんが残るなら僕も残るんだ!! |
睦 |
084_017 |
聞き分けないこと言わないで! |
円と達治が現れる |
円 |
085_010 |
むっちゃん! |
睦 |
086_018 |
円? |
円 |
087_011 |
大丈夫? どこも怪我ない? 洗脳されてない? |
睦 |
088_019 |
大丈夫よ。あたしはね |
達治 |
089_010 |
さつき、おいどうした |
さつき |
090_019 |
煩い。さっさと帰ればいいだろ。僕はここに残る |
達治 |
091_011 |
はぁ? |
結香 |
092_010 |
この方は本間星羅様として、ご自分で、ここに残られることを選ばれました。お客様方を町に送ってください、達治さん |
達治 |
093_012 |
結香ちゃん |
なにかの音が聞こえる |
睦 |
094_020 |
? ねぇ、なにか聞こえない |
円 |
095_012 |
なにかって? |
睦 |
096_021 |
上の方から |
靖幸 |
097_011 |
上は、温室。まさかリコリスの花になにか!? |
睦 |
098_022 |
達治さん、星羅さんを担いで。さつき、しゃきっと立ちなさい。上に行くわよ |
結香 |
099_011 |
待って! |
睦 |
100_023 |
待てないわ。焦げてる匂いがする。なにかが燃えてるのよ! |
円 |
101_013 |
それってまずいよ! |
睦 |
102_024 |
だからはやく地上に出るわよ! |
巽 |
103_001 |
地上に行かれるのは睦様、円様、さつき様、達治くんだけでお願いします |
巽がゆっくりと階段を下りてくる |
靖幸 |
104_012 |
ああ、巽くん。来てくれたのか。聞いてくれ、姉さんがここに残ると。ずっと私の傍にいると言ってくれたんだ |
巽 |
105_002 |
それは喜ばしいことでございます御方様。さ、皆様、おはやく地上へ。ここももうすぐ火の手が回ります |
睦 |
106_025 |
なにを言ってるの。みんなで逃げなきゃ! |
巽 |
107_003 |
睦様。わたくしどもの行為は裁かれるべきもの。ですが、御方様が裁かれる姿を見ることなど耐えられないのです |
睦 |
108_026 |
だから、ここでみんなで焼け死ぬって言うの? |
結香 |
109_012 |
それが、幸せ。邪魔を、しないで |
円 |
110_014 |
そんな幸せないよ! 結香ちゃん、一緒に行こう! |
結香 |
111_013 |
要らない。自分は、ここがいい |
達治 |
112_013 |
御方様、本当に残られるんですか |
靖幸 |
113_013 |
ああ。すまないね、達治くん。君には迷惑ばかりをかけている気がする |
達治 |
114_014 |
……いえ。今までお世話になりました |
靖幸 |
115_014 |
さつきくん。すまない。君が何故悲しんでいるのか、私には判らないけれど。君が悲しんでいることは判る。そしてその原因が私であることも。すまない |
さつき |
116_020 |
理由も判らないのに謝られても、不愉快なだけだ!! |
靖幸 |
117_015 |
そうか |
さつき |
118_021 |
……本間星羅さん |
星羅 |
119_013 |
なぁに、草間さつきくん |
さつき |
120_022 |
どうしても残るの? |
星羅 |
121_014 |
ええ、残るわ |
さつき |
122_023 |
草間の家にある、なつきさんの部屋はどうするの |
星羅 |
123_015 |
さつきくんにあげる。もらってあげて? |
さつき |
124_024 |
……僕は! 僕の姉である、草間なつきが大好きだからね! |
星羅 |
125_016 |
草間なつきさんも、きっと、さつきくんのこと、大好きよ |
巽 |
126_004 |
さ、皆様。お早く地上へ。達治くん、ガレージは火の回りを遅くしておきました。車もすぐ出せるようにしています |
達治 |
127_015 |
巽さん! |
巽 |
128_005 |
お客様たちを無事、町にご案内してください。それが貴方の最後の仕事です |
達治 |
129_016 |
……判りました |
睦 |
130_027 |
みんな、行こう |
轟々と燃え盛る炎を後ろに一同はガレージまで走り、車にて脱出する |
振り向けば、山の中原にある鳴月館が赤々と燃えているのが確認できた |
●レストラン |
SE 新聞を広げる |
睦 |
131_028 |
大きく記事になってるわね。鳴月館の火事 |
達治 |
132_017 |
死体は4つ。仲良く寄り添ってあったらしいぜ |
さつき |
133_025 |
身元は本間靖幸、冴場巽、芦屋結香と、身元不明の女性、ね |
円 |
134_015 |
本当の星羅さんと、なつきさんじゃ、年が違うからね |
さつき |
135_026 |
そんなこと、円さんに言われなくても僕が一番知ってる! |
達治 |
136_018 |
んで? みんなして俺の新しい職場に遊びに来てくれたー、ってわけでもなさそうだな |
睦 |
137_029 |
あたしと円は、あの館で鍵つきの日記を手に入れてたの。その中身を一応、話しておこうと思って |
さつき |
138_027 |
鍵、壊したんだ |
睦 |
139_030 |
もう誰にも咎められることないしね。内容は、靖幸さんと星羅さんの交換日記。読みたければどうぞ。あたしたちは読んだから。あ、達治さん、あたしステーキで! |
達治 |
140_019 |
おお、奮発するねぇ! |
睦 |
141_031 |
奢ってね? |
達治 |
142_020 |
俺に大打撃! |
円 |
143_016 |
あー、私もステーキ! |
達治 |
144_021 |
連続打撃!? |
さつき |
145_028 |
はぁ、馬鹿っぽい。えっと、なになに。4月17日、今日から日記を始めようと―― |
END |