Longing End 〜切望の果て〜5

 出演キャスト様
キャラ名 台詞数
15
さつき 19
20
星羅 7
靖幸 7
15
達治 22
結香 24


役名 番号 台詞
●地下
 目を覚ますとそこは地下で、睦は椅子に括りつけられ、変な機械を頭に付けられている
 首が回らないので誰がいるか判らない睦は、気絶するまで一緒にいたさつきを探す
001_001 さつき! さつき、聞こえる? どこかにいる?
さつき 002_001 う、うん?
 さつきは睦とは離れた場所で床に転がされ縛られている
さつき 003_002 睦さん?
004_002 怪我は?
さつき 005_003 ないけど。ここは?
006_003 知らないわ。あたし、首が回らないの、なにか見えない?
さつき 007_004 僕も縛られてるし、暗くて……あ、本間さんが!
008_004 本間さん? え? どこ?
さつき 009_005 僕の前で椅子に座って。本間さん! 本間さん!!
 話しかけるが靖幸は魂が抜けたように空ろな瞳でいるだけだ
さつき 010_006 駄目。なんか意識がここにないっぽい
011_005 どうなってるっての?
 扉が開き、巽が車椅子ごと入ってくる
012_001 ああ、もうお目覚めでしたか
さつき 013_007 お前! っぁ――ああ!
014_006 さつき、どうしたの! 
さつき 015_008 そ、その、人は、僕の――姉さん
016_007 ちょっと見えないでしょ。あたしをのけ者にしないで!
017_002 申し訳ありませ。今そちらに参りますね、睦様。さ、星羅様、参りましょう
さつき 018_009 馬鹿言うな! その人は僕の姉さんだ! やっぱり、お前たちが犯人だったんだ!
019_003 このお方は本間星羅様。なんでしたら、ご自分でお確かめになられたらよろしいかと。星羅様、お目覚めください
 星羅が閉じていた瞼を開ける
 とても人が喋っているとは思えない無気力無感情な声が響く
星羅 020_001 ……タツミ?
 星羅の声に反応するように靖幸が目を覚まし、駆け寄る
靖幸 021_001 姉さん。起きていたのですか!
星羅 022_002 ええ。ヤスユキ。今日は気分がいいから。その人たちは、貴方のお友達?
靖幸 023_002 はい。昨日雪山で遭難された方たちで。宿をお貸ししたんです
星羅 024_003 まあ。貴方はいつも私の真似をしてしまいますね
靖幸 025_003 私の憧れはいつでも、姉さんですから
さつき 026_010 違う! 姉さん! 僕だよ、さつきだ! ねぇ、冗談だよね。どうして車椅子に乗ってるの? どうしてこんなお芝居に付き合うの?
星羅 027_004 ? タツミ、あの少年はなにか勘違いをしているわ
028_004 はい。星羅様のことを、ご自分の姉だと思っているようですね
星羅 029_005 ごめんなさい。私は貴方の姉ではないのよ?
さつき 030_011 そんな、嘘だよ! 嘘だ! 姉さんは草間なつき! 僕の姉さんだ!!
星羅 031_006 クサマ ナツ……ナツ、ナツキィ?
さつき 032_012 姉さん!
033_005 おやめください、さつき様。脳に負荷がかかると壊れます。混乱させてはいけません。このお方は本間星羅様です。御方様、私が睦様とさつき様にご説明いたしますので。隣の部屋で、星羅様と一緒にいてくださいますか?
靖幸 034_004 ああ、構わないよ。行こう、姉さん
星羅 035_007 ええ、ヤスユキ
 本間兄弟は部屋を出て行く
036_008 説明、してくれるんですよね、巽さん
037_006 勿論でございます、睦様
038_009 だったらついでに、この拘束をといてくれると嬉しいんだけど?
039_007 それはできかねます
さつき 040_013 さっさと答えろ! どうして僕の姉さんが本間さんの姉だっていうんだ!!
041_008 そうですね。どこからお話しましょうか。まず、もうお判りでしょうが、本物の星羅様は既にこの世におりません。あのお方は7人目の星羅様です
さつき 042_014 7人目!?
043_009 睦様にはお話しましたよね。星羅様と御方様は、それは仲のよいご姉弟であったと。それがある日、星羅様の死を境に狂ってしまったのです。御方様は星羅様の死を受け入れられず、死者を蘇らせる実験を繰り返されるばかり。しかし、死者を蘇らせるなど神の所業。できうるはずがありません。それでも御方様は諦めませんでした。そして、壊れてしまった
044_010 書庫にあった本は、両親じゃなくて星羅さんを蘇らせるためのものだったの?
045_010 ご両親の時も、御方様は蘇らせようとしておられました。ただあの時は幼かったのです
さつき 046_015 僕らにそれを聞かせて、貴方はどうするつもり
047_011 先ほどの星羅様を見られましたか? やせ細り、今にも命の火が消えそうなお姿を
さつき 048_016 病院に連れて行けばいい! そうすれば絶対に、僕の姉さんだって証明される。治療だって
049_012 どうしても病院に連れて行きたいと仰るのであれば、今しばらくお待ちください。星羅様の意識を睦様に移した後であれば、お好きになさって構いません
050_011 はぁ!? ちょっと待って、え? あたし? 冗談じゃないわよ!?
051_013 不服でしょうか?
052_012 不服に決まってるでしょ!
053_014 睦様が頷いてくだされば、円様は無事、町まで送り届けましょう。今の星羅様も、返してあげることができます。睦様さえ、ここに残ってくだされば
054_013 ……断れば?
055_015 睦様の代わりに円様に儀式を施すことになるかと。さつき様は残念ながら、町にお返しすることはできません。ここで暮らすか、ここで死ぬか、好きな方をお選びください
さつき 056_017 どっちも断るに決まってる!
057_016 そうですか。私は一度地上に戻ります。次来た時は色よい返事をいただけることを願っております
 巽が部屋から出て行く
さつき 058_018 ねぇ、どうするつもり。まさか条件を呑むわけないよね
059_014 ……冗談じゃないわ。どうして誰かの代わりをしなきゃいけないの。……円が来るから、それまでに妥協案を考えましょう
さつき 060_019 あのぼけーっとしてるのが助けに来てくれるの?
061_015 来てくれるわ
●応接間
062_001 いなーい! むっちゃん、どこ行ったのー!
達治 063_001 屋敷中、探したよな? 本気でいねぇぞ?
 靖幸が誰も乗っていない車椅子を押しながら応接間に入ってくる
達治 064_002 あ、御方様!
065_002 靖幸さん! あの、むっちゃんっがいなくなっちゃったんです!
靖幸 066_005 睦さんが、ですか?
達治 067_003 さつきもいねぇんです。色んなとこ探してて。あ、勿論3階には行ってないですから
靖幸 068_006 ああ、3階は……もういいんだよ。姉さんは、もうすぐ元気になるから
069_003 ? 靖幸さん、その車椅子、どうしたんです? 
達治 070_004 そいつは星羅様の……どこかに出かけられてたんですか?
靖幸 071_007 ああ。少し散歩がしたくなったからね。と、睦さんと、さつきくんのことだったね。私も探してみよう
 靖幸が出て行く
達治 072_005 変だ。なんで3階に入っていいってなるんだ? 元気になるって、腕のいい医者が来るわけでもねぇだろうし
073_004 それに靖幸さんって、体調が悪いから部屋にいるんじゃなかったんですか? 元気そうですけど
達治 074_006 ……結香ちゃんを探そう。あの子はなにか知ってる
075_005 でもどこにいるか
達治 076_007 たぶん、執事部屋だ。困ったことがあると、いつもそこに行くんだよ
●執事部屋
達治 077_008 みーつけた!
結香 078_001 ひぃ!!
達治 079_009 おっと、逃げらんねぇぞ? 話がしてぇんだ、結香ちゃん
結香 080_002 じ、自分には、話す、こと、ない
081_006 あのね、むっちゃんと、さつきくんがいないの。なにか知らない?
結香 082_003 知らない!!
達治 083_010 その顔は絶対知ってるだろ。なんで知らないなんて嘘つくんだ
結香 084_004 う、うう、嘘、じゃない
達治 085_011 なぁ結香ちゃん。人がいなくなってんだ。知ってることがあったら教えてくれ
結香 086_005 ……自分は、御方様の味方、だから。駄目
達治 087_012 その言いぶりじゃ、御方様が二人を隠したって風に聞こえるぜ?
結香 088_006 ! 違う!! 御方様じゃない!!
089_007 じゃあ、巽さん?
結香 090_007 ……もう町に帰って。これ以上は駄目。知っては駄目。知ればきっと、貴方達も帰れなくなる
091_008 結香ちゃん。わたしは、むっちゃんと一緒じゃないと下山しないよ。むっちゃんがいないなら帰らない
結香 092_008 (すがるように)帰らないの? ずっとここにいてくれるの?
達治 093_013 ああ。ここにいる。俺たちは味方だ。御方様を責めたりしない。だからなにが起きてるのか、教えてほしいんだ
結香 094_009 ……儀式が、はじまるの。睦さんに星羅様の魂を移し変える儀式が
095_009 な!?
達治 096_014 (小声で)抑えろ。まだだ
結香 097_010 いまの星羅様は、もうすぐ死んでしまう。だから、新しい体が必要なの
達治 098_015 それが睦ちゃんだってのか。さつきは?
結香 099_011 さつきさんの本当のお姉さんが、いまの星羅様。それを知ったらもう、さつきさんは町に返せない。ここに残らないのなら、きっと殺される
達治 100_016 いままで、この館に来て帰らなかった人がいるってのは、ここに繋がるのか。でも待ってくれ、帰ってこないのは女だけじゃなく男もいたはずだ。まさか星羅様の魂を男に移し変えるなんてしないだろ?
結香 101_012 しない。男は……男は、駄目なの。星羅様を殺した、男は、死なないと、だめ
達治 102_017 殺された?
結香 103_013 星羅様は、とても、優しかった。いつも遭難者を助けて。なのに、あいつらが、男たちが、星羅様を――だから、遭難する男は、殺さないと駄目。生きていては、いけないから
104_010 結香ちゃんはそれを知ってて、わたしや、むっちゃんに黙ってたの?
結香 105_014 ……自分には、御方様が一番、だから。悪いことだって、知ってる、けど。御方様が笑ってくれるなら、誰にだって、どんな嘘だって、つく
106_011 結香ちゃんは、御方様のこと、好きなんだ
結香 107_015 孤児だった自分を、引き取って、育ててくれた。大切な人
108_012 そっか。でもね、わたしもむっちゃんが大事なんだ。たった一人しかいないの。わたしの友達。お願い、結香ちゃん。むっちゃんを返して
結香 109_016 でも、御方様は
110_013 むっちゃんは星羅さんじゃないよ? 洗脳、するのかは判らないけど。もう星羅さんはいない。そうでしょ?
結香 111_017 違う、星羅様は、蘇るの。死んでも、死んでも、何度でも蘇って、御方様の傍に
達治 112_018 そいつはもう星羅様じゃねぇよ。成り代わった奴を当人だって思い込ませるのは、相手に失礼だ。結香ちゃんは御方様を裏切ってる。偽りの相手を、自分の姉だって御方様に刷り込んでる。違うか?
結香 113_018 だって、そうしないと、御方様が、壊れてしまうの
達治 114_019 どんな悲しみも苦しみも、乗り越える強さを人は持ってると俺は思う。自分が辛いからって、誰かの幸せをとったり、誰かを泣かしたりするのは違うだろ
結香 115_019 でも……でも!!
達治 116_020 教えてくれ。睦ちゃんと、さつきはどこにいる
117_014 お願い結香ちゃん!
結香 118_020 ……地下の、部屋に
達治 119_021 地下!? んなのあるのか?
結香 120_021 温室から行けるの。奥に扉があるから
121_015 達治さん、行きましょう!
達治 122_022 おう。ありがとな、結香ちゃん
 
 二人は去る
 巽が現れる
123_017 温室に案内したんですか、結香さん
結香 124_022 ……二人は、ここに残るって言った。だから、自分、悪くない
125_018 そうですね。残ってくれれば誰も傷つかず済むんですけどね
結香 126_023 御方様は?
127_019 星羅様の元へいかれました。傍にいてあげてください
結香 128_024 うん
129_020 ここまで、でしょうかね
 巽は静かに去る


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