役名 |
番号 |
台詞 |
●温室 |
むわりとした空気に、一面に咲いているリコリス |
温室の外は雪が積もっていて、変な感じがする |
睦 |
001_001 |
綺麗なところね。彼岸花って言うから、もっと全面的に真っ赤なのかと思ったわ |
さつき |
002_001 |
……どうしてついてきたの |
睦 |
003_002 |
きちゃいけなかった? |
さつき |
004_002 |
だって睦さんは円さんと一緒に行動してたじゃない。僕を監視するつもり? |
睦 |
005_003 |
そんな意味のないことしないわ。ただ、あなたの話も聞いてみたくなっただけ |
さつき |
006_003 |
僕の話? |
睦 |
007_004 |
昨日、夕食の時、言ってたでしょ。お姉さんがこの館に来て帰らなくなったって |
さつき |
008_004 |
……どうせ信じてないくせに |
睦 |
009_005 |
そりゃ、証拠がないんじゃ信じようがないじゃない。だから証拠集め。話してみてくれない?お姉さんに何があったか |
さつき |
010_005 |
……いまから2年くらい前。僕の姉さんは友達と一緒にスキーに行ったんだ。その日のうちに帰るって約束してたのに、帰ってこなかった。友達の話だと、雪山の途中で逸れたって。そしてその場所は、この鳴月館の近く |
睦 |
011_006 |
それだけで、ここの人たちが怪しいって言うの? |
さつき |
012_006 |
それだけじゃないよ!姉さんがいなくなってから僕は必死に探した。そうして、半年前くらい前に聞いたんだ。偶然この館に遭難した人が、姉さんにそっくりな人を館で見たって!姉さんが消えたのはこの辺り。館には姉さんに似た人がいる。じゃあどう考えたって、捕らえられてるとしか思えないじゃないか! |
睦 |
013_007 |
だから張り切って乗り込んできたってわけ?証拠不十分よ? |
さつき |
014_007 |
遭難した人は、姉さんに似た人がこう言ったのを聞いたんだ「帰りたい。会いたい、さつき」って |
睦 |
015_008 |
……それは |
さつき |
016_008 |
嘘か本当かなんてどうだっていい。姉さんが生きててくれたら。でも、こんな寒い場所で囚われてるなら、連れて帰ってあげたい |
睦 |
017_009 |
じゃあ、証拠でも見つかった? ここにあなたのお姉さんがいるという証拠は |
さつき |
018_009 |
ないよ。探したけど、どこにもいない |
睦 |
019_010 |
怪しいとなると3階よね。誰も入らないようにって言われてるし。行った? |
さつき |
020_010 |
行ってない。ずっと執事が見張ってて入れない |
睦 |
021_011 |
ふーん。あたしも入ってないし。円にも聞いてみましょうか。ちょっと待ってね(携帯を弄る) |
さつきは不貞腐れたようにしゃがみこみ、リコリスを見つめている |
とふと、不自然に盛り上がった土を見つける |
恐る恐る対を掘り返した先にあったのは、白骨化した人間の骨 |
さつき |
022_011 |
なにこれ。土が盛り上がって……う、う、うあ!?(しりもち) |
睦 |
023_012 |
どうしたの? |
さつき |
024_012 |
あ、ああ、あれ |
睦 |
025_013 |
あれ? ……骨、かしら |
さつき |
026_013 |
なんで、こんなところに? |
睦 |
027_014 |
知るはずないでしょ。動物の骨、じゃないわよね、これ。明らかに、人の―― |
さつき |
028_014 |
ど、どうして? まさか、姉さんの! |
巽 |
029_001 |
違いますよ |
どこからか出てきた巽が二人の後ろにいる |
さつき |
030_015 |
(警戒しながら)……違う? |
巽 |
031_002 |
はい。それはさつき様の姉上様の骨ではありません |
睦 |
032_015 |
じゃあ、これは誰の骨? |
巽 |
033_003 |
その骨は。愚かにも星羅様に不貞を働こうとした男のモノ。汚らわしいのでお持ちにならないようお願いいたします |
とふと、体が自由に動かず、眠気が体を襲ってくる。 |
睦 |
034_016 |
巽さん。貴方は……あれ、脚に力が、入らない? |
さつき |
035_016 |
うそ。なんで? 僕、眠くない、のに |
巽 |
036_004 |
大丈夫です。この温室に充満する香りに毒性はありません。しばらくの間、お休みください。けして手荒な真似は致しませんから |
さつき |
037_017 |
お前、たちが、姉、さんを? |
巽 |
038_005 |
お休みなさいませ。睦様、さつき様 |
二人は意識を失い倒れる |
それを悲しい顔で見ている巽 |
しばらくはそのままだったが、諦めたように睦とさつきを担ぎ、温室を後にした |
●遊戯室 |
円 |
039_001 |
ほほぉ。ここが遊戯室。おっじゃましまーす。ああ、憧れのビリヤードだぁ! |
結香 |
040_001 |
ビリヤード、好き? |
円 |
041_002 |
うひょう!! |
結香 |
042_002 |
あ、ごごごご、ごめん、なさい。脅かす、つもりは、なかった、の |
円 |
043_003 |
あ、うん、いいのいいの。わたしが驚きすぎただけだから。えっと結香ちゃん? |
結香 |
044_003 |
なん、ですか |
円 |
045_004 |
えっと、わたしに用があってここに来たんじゃ。ないんですかね? |
結香 |
046_004 |
……別に、用は、ない |
円 |
047_005 |
あ、物を壊さないかの監視? |
結香 |
048_005 |
そんなこと、すると、思ってないから |
円 |
049_006 |
? そうなんだ。じゃあもしかして、わたしとお話したいとか! |
結香 |
050_006 |
それはない! |
円 |
051_007 |
そう、ですか |
結香 |
052_007 |
あ |
円 |
053_008 |
いやうん。判ってたけどさ、そこまではっきり言われると、ちょっと傷つく |
結香 |
054_008 |
あの、あああの、そんなつもりじゃ |
円 |
055_009 |
ううん。いいよ。知らない人と話すの、苦手なんだよね |
結香 |
056_009 |
……判るの? |
円 |
057_010 |
うん、わたしもそうだったから。昔はね |
結香 |
058_010 |
そう、なの |
円 |
059_011 |
結香ちゃんは、ここに来て長いの? |
結香 |
060_011 |
そう、長くは、ない、と思う |
円 |
061_012 |
ここの人たち、好き? |
結香 |
062_012 |
……うん |
円 |
063_013 |
ならいいんだ。素敵な人たちと巡り会えたね |
結香 |
064_013 |
うん。自分は、御方様のためなら、なんでもできるから |
円 |
065_014 |
靖幸さんのこと、好きだねぇ。あ、この写真、靖幸さんの小さい頃の? |
結香 |
066_014 |
そう。隣が星羅様 |
円 |
067_015 |
仲いい姉弟だったんだね〜。どの写真も二人で写ってる |
結香 |
068_015 |
御方様のご両親は、はやくに他界されたから |
円 |
069_016 |
巽さんから聞いたよ。靖幸さんの面倒は星羅さんがみてたって。あ、睦からだ。(携帯を開ける)えーっと何々? 3階に行ったことある? ないって。昨日のは……階段の途中までだったからノーカン、うんノーカン! ――結香ちゃん? |
結香 |
070_016 |
3階は、踏み入っては駄目。会っては駄目。星羅様に、会ってはいけないの |
円 |
071_017 |
そんなに怪我、酷いの? |
結香 |
072_017 |
……会ってはいけないの |
円 |
073_018 |
結香ちゃんは、星羅さんに会ったことある? |
結香 |
074_018 |
今の星羅様になら、ある、けど |
円 |
075_019 |
ふーん。……あれ? ここにある写真、大人になってからのがないね。若い写真ばかり。なになに、老け顔は写真に残さないってかぁー? |
結香 |
076_019 |
! ……駄目! |
結香が円を突き飛ばす |
円 |
077_020 |
わ? 結香ちゃん? |
結香 |
078_020 |
駄目。これ以上は駄目、貴女は帰るの、だから |
円 |
079_021 |
えっとー? |
結香 |
080_021 |
出て行くといいの。二度と、こないで。早く、逃げて |
円 |
081_022 |
逃げてって、どう言う意味!? |
結香 |
082_022 |
……ごめん!! |
結香は走って逃げてしまう |
追いかけようとする円の後方から達治が声をかける |
達治 |
083_001 |
おーい! 円ちゃーん |
円 |
084_023 |
達治さん |
達治 |
085_002 |
ようやく見つけた。睦ちゃんとさつき知らねぇ? 温室探したけどいなくてよぉ |
円 |
086_024 |
むっちゃんならさっきメールが来て。あ、返事してないや。3階には行ってないよ。送信! え? |
達治 |
087_003 |
どうした? |
円 |
088_025 |
メールがセンターに蓄積されましたって、なんで? え? むっちゃん電源切ったの? |
達治 |
089_004 |
電池切れか? |
円 |
090_026 |
あー、充電器持ってきてないから、ありえるかも |
達治 |
091_005 |
どこ行ったか判んねぇよな |
円 |
092_027 |
ですね。探しましょう! |
達治 |
093_006 |
おう! そういや、さっきなんか結香ちゃん走ってなかったか? |
円 |
094_028 |
あ、そうだった。はやくここから出て行ってって言われて |
達治 |
095_007 |
どういうことだ? |
円 |
096_029 |
判りません。星羅さんを見たことある? って聞いたらいきなり |
達治 |
097_008 |
……なぁ、円ちゃん。俺、ここの人たち、結構気に入ってんだ |
円 |
098_030 |
はい。皆さん仲がいいですし、家族みたいで。わたしも好きです |
達治 |
099_009 |
だからさ、疑いたくないんだ |
円 |
100_031 |
達治さん? |
達治 |
101_010 |
俺がここに来てから、星羅様に会ったことはねぇ。顔も見たことねぇ。けど辞めた古株がこぼした言葉があるんだ。今の星羅様――崖から落ちた星羅様は、本当の星羅様じゃないって |
円 |
102_032 |
違う人? |
達治 |
103_011 |
けど、見たことねぇけど、俺は星羅様が御方様や巽さんと会話してんの扉越しに聞いたことあるし。そん時は、星羅様は自分のこと、御方様の姉だって言ってたし |
円 |
104_033 |
え? ええっと? 本人は自分が星羅さんだって言うけど、他人は違うって言ってるってことですか? |
達治 |
105_012 |
ああ |
円 |
106_034 |
ともかく、むっちゃんとさつきくんを探しましょう。どこかにいるはずですから |
達治 |
107_013 |
だな |