役名 |
番号 |
台詞 |
●雪山 |
SE吹雪+足音 |
円と睦はとぼとぼと歩いている |
視界は悪く、足元しか見えない |
スキーウェアは厚いが、既に体は芯から冷えており、歯が鳴る |
と、沈黙に耐え切れなくなったのか円が騒ぎ出した |
円 |
001_001 |
ぜーったい、さっきの道、左だったんだって。標識出てなかったけど、それっぽいかったし |
睦 |
002_001 |
なら、戻れば? |
円 |
003_002 |
むっちゃんが、こっちであってるって言ったんだよ!? |
睦 |
004_002 |
だから、嫌なら戻ればいいでしょ。ついて来てほしいなんて言ってないから |
円 |
005_003 |
いやいや一人で戻るとかナイから。雪山なんだよ?遭難しかけてるんだよ?もう少し焦ろうよ! |
わめく円に脚を止めた睦が振り返る |
睦 |
006_003 |
焦っても仕方ないでしょ |
円 |
007_004 |
ならせめて引き返そうよ〜 |
睦 |
008_004 |
あたしはこのまま行くから |
円 |
009_005 |
なんでそんなところで頑固かなぁ |
睦 |
010_005 |
帰るなら一人でどうぞ |
円 |
011_006 |
ヴァ〜、このまま遭難するんだぁ〜。誰にも発見してもらえないんだぁ〜。明日の朝刊で、女子大学生、雪山で死亡!とかいう大きな一面を飾ったりするんだ〜 |
睦 |
012_006 |
そんなにすぐ新聞に乗ったりしな――円(まどか)。なにかある |
円 |
013_007 |
うえ!?な、ななな、なに!? |
怯えて睦に抱きつく円 |
と、降り止まぬ雪の隙間から大きな館が姿をみせた |
睦 |
014_007 |
(呟くように)……館 |
円 |
015_008 |
(呟くように)ホントだ……。(元気に)やった、やったやった!むっちゃんあそこ行こう! |
睦 |
016_008 |
(いぶかしむ)こんな処に館? |
円 |
017_009 |
細かいことはいいから。ほらはやく!このままじゃ凍えて死んじゃうから! |
睦 |
018_009 |
うん |
睦の手を引いて円は館に近づいた |
吹雪は一層、背に叩きつけてくる |
円 |
019_010 |
ここ鳴月館(めいげつかん)っていうんだって。おっと、チャイムチャイムー |
SEチャイム |
睦は振り返り、雲が厚くなる空を見やる |
睦 |
020_010 |
吹雪が強くなってきた……下山は無理、かな |
SE扉が開く |
巽 |
021_001 |
はい |
円 |
022_011 |
あ、あの〜、わたしたち、遭難しちゃってー |
●タイトルコール |
睦 |
023_011 |
オリジナルボイスドラマ「LongingEnd(ロンギングエンド)切望の果て」 |
円 |
024_012 |
Longing End(ロンギングエンド) ※睦の台詞の一部に被ります |
●応接間 |
暖炉がある部屋に案内された円と睦は毛布に包まっている |
館の主である靖幸は椅子に座っており、二人をとても心配そうに見つめている |
SE 薪が爆ぜる |
靖幸 |
025_001 |
災難でしたね。雪山の天候は気まぐれなもの。特にこの時期は吹雪くと前も見えなくなります。そのせいか遭難者もあとを絶たず。館を見つけられたのは不幸中の幸いでしたね |
円 |
026_013 |
ありがとうございました! 本当に助かりました |
靖幸 |
027_002 |
いえいえ、女性お二人で迷われるなど、さぞや心細かったことでしょう |
睦 |
028_012 |
別に、大丈夫でした |
靖幸 |
029_003 |
ははは、気丈なお嬢さんですね |
円 |
030_014 |
ご、ごめんなさい。靖幸(やすゆき)さん |
靖幸 |
031_004 |
いえ、気にしていませんよ |
SE ノック |
巽 |
032_002 |
御方(おかた)様、お飲み物のご用意ができました |
靖幸 |
033_005 |
ああ、巽(たつみ)くんか、入ってくれ |
巽が入ってくる |
巽 |
034_003 |
失礼致します |
靖幸 |
035_006 |
彼は私の執事、冴場(さえば) 巽くんです |
円 |
036_015 |
あ、わたしは藤上(ふじがみ) 円です。こっちは沢嶋 睦(さわしま むつみ) |
巽 |
037_004 |
円様と睦様ですね。ではお嬢様方、冷えたお体にホットレモネードなど、如何でしょうか |
巽が持ってきたポットを少し掲げて笑いかける |
続いてティーカップを机の上に置いていく |
円は嬉しそうに机へと近づくが、睦は暖炉の傍から離れない |
円 |
038_016 |
もらいまーす! |
巽 |
039_005 |
はい。(様子を伺いながら)……睦様、いかが致しましょう |
睦 |
040_013 |
(少し迷いながら)レモネード |
巽 |
041_006 |
(にこやかに)紅茶、ゆず茶、緑茶、ホットミルク、ココア。その他、お望みのモノがございましたら、なんなりと |
睦 |
042_014 |
(苦手なのがバレたかと少し焦る)え? あ、や。別にレモネードでも―― |
巽 |
043_007 |
お客様をおもてなしすることが私の至上の喜びなのですが |
靖幸 |
044_007 |
折角ですから好きなものを仰ってください。巽くんは人の世話を焼くのが好きでしてね。彼の我儘を叶えてあげてはくれませんか? |
睦 |
045_015 |
なら、紅茶で |
巽 |
046_008 |
畏まりました。茶葉はアールグレイ、セイロン、ダージリンと―― |
睦 |
047_016 |
判らないので、お勧めで |
巽 |
048_009 |
承りました |
巽が下がる |
その扉にしがみつきながら結香が呟いている |
結香 |
049_001 |
(ぶつぶつ呟いている)どうして自分が、どうして自分が、これはなにかの試練? いや、試練ではなく訓練。これも御方様のため、御方様のため、頑張れ自分。負けるな自分、立ち上がれ自分……駄目、負けそう(靖幸たちの言葉に被ります) |
靖幸 |
050_008 |
すみませんね、来客が少ない館なので。巽くんはお嬢さんたちの世話をするのが楽しいようだ |
円 |
051_017 |
そうなんですか、こんなに大きくて綺麗なお屋敷なら、見に来る人も多いと思ったんですけど |
靖幸 |
052_009 |
この館は市街地から離れていますので、訪れる人は限れますね。時々、お嬢さんたちのように、道に迷った方がこられるくらいで |
睦 |
053_017 |
(言おうかやめようか迷って)……あの、気になってたんですが |
靖幸 |
054_010 |
はい、なんでしょうか |
睦 |
055_018 |
扉の傍でなにか呟いているあの子も、この館の人でしょうか |
靖幸 |
056_011 |
はて、扉? ああ、結香(ゆいか)くん。そんなところにいないで入っておいで |
結香は扉の角に隠れ、睦たちを観察している |
靖幸に呼ばれ、ピンと反応したが、睦たちを観察するだけで入ってこない |
|
円 |
057_018 |
あの服装、ピピンときたよ! メイドさんだ! |
結香 |
058_002 |
メイド、メイドォゥ、自分がメイドなんて、なんて、恐れ、多い |
円 |
059_019 |
お、おう。なんだか、じめじめしてる |
結香 |
060_003 |
(ずずいと入ってきて円の手を取る)判って、くれる? 自分、メイドなんてできる、ほど、明るい性格、して、ないの。笑顔も引きつるし。なのに、なのに、どうして、メイドォゥなんて…… |
睦 |
061_019 |
……随分と個性的なメイドさんですね |
靖幸 |
062_012 |
仕事はきちんとできる子なのですが。こら、結香くん。お客様にご挨拶を |
ゆらりと立ち上がると髪の毛を口に挟み、ホラーっぽいポーズで結香がニタリと笑う |
結香 |
063_004 |
おきゃくさぁまぁ、ようこそお越しくださいましたぁ |
円 |
064_020 |
こ、怖いよ! |
睦 |
065_020 |
人の背中に隠れないで |
靖幸 |
066_013 |
あははは、まぁ、吹雪は今日一日続くようですし、本日はこの館にお泊まりください |
円 |
067_021 |
ええ!? そんな、雪がおさまったら出て行きますから |
靖幸 |
068_014 |
雪山を甘く見てはいけませんよ。ラジオでは夜にかけて本格的に天候が崩れるといっていました。悪いことは言いません。お泊まりなさい |
円 |
069_022 |
うーん、でも……どうする、むっちゃん |
睦 |
070_021 |
泊まらせてもらった方がいい、かな。ほら、あれ |
SE 遠くの方で雷 |
円 |
071_023 |
うあー、雷さん |
睦 |
072_022 |
本間(ほんま)さん、宜しくお願いします |
靖幸 |
073_015 |
はい、宜しくお願いされます。じゃあ私は自室に戻ろうかな。結香くん、お客様の相手を頼みますよ |
結香 |
074_005 |
むりむりむりむりぃ |
靖幸 |
075_016 |
何事も経験です。――返事は? |
結香 |
076_006 |
……はい |
靖幸 |
077_017 |
よろしい。では、失礼しますね |
靖幸が扉を開けると紅茶を持っている巽がいる |
靖幸 |
078_018 |
ああ、巽くん、いいところに。あとで私の部屋にリコリスを届けてくれないか |
巽 |
079_010 |
畏まりました |
結香 |
080_007 |
巽さんが、いる、なら、自分必要ない、です、よね。じゃ、じゃあ失礼します! |
結香は全力で逃げていく |
円 |
081_024 |
あ、逃げた |
睦 |
082_023 |
ま、人には向き不向きがあるから |
巽 |
083_011 |
館の者が、ご無礼を。平にお許しください |
円 |
084_025 |
気にしないでください。全然気にしてませんから |
巽 |
085_012 |
そう言って頂けると助かります。睦様、紅茶がご用意できました |
睦 |
086_024 |
……ありがとう |
●睦と円の部屋 |
SE 部屋の扉を開ける |
部屋はまるでホテルのように綺麗だった |
二つのベッドに、机、クローゼット、全て綺麗に掃除されている |
巽 |
087_013 |
お部屋はこちらをお使いください。なにかご入用の際は、そちらのお電話か、一階の執事部屋においでください。ご夕食は19時を予定しております。アレルギーなどはございますか? |
円 |
088_026 |
ないです! |
睦 |
089_025 |
あたしも。どこか立ち入ってはいけない場所とかは? |
巽 |
090_014 |
三階は御方様と星羅(せいら)様のお部屋がありますので、ご遠慮いただければ |
円 |
091_027 |
星羅さんって誰ですか? |
巽 |
092_015 |
御方様の姉上様です。大怪我をされてから、お部屋に篭られていて |
睦 |
093_026 |
大怪我? |
巽 |
094_016 |
はい。雪が多い日のことでした。外にお出かけになられた星羅様は道を誤り崖から転落されたのです。一命は取り留めましたが後遺症が酷く。今は床にふせっておられます |
睦 |
095_027 |
じゃあ三階はなしね、円 |
円 |
096_028 |
はーい! |
巽 |
097_017 |
あと、差し出がましいとは思うのですが、けして外へはお出にならぬよう、お願いいたします |
睦 |
098_028 |
その言いぶりだと、過去に誰か出て行ったりした? |
巽 |
099_018 |
退屈凌ぎにと庭に出られたらしく……結局、お戻りになることはありませんでした |
円 |
100_029 |
絶対に出ません! |
巽 |
101_019 |
そうしていただけますと、こちらも安心できます |
SE チャイム |
巽 |
102_020 |
(嬉しそうに)おや、新たな来訪者ですか。本日は忙しい。お話の途中なのですが、お嬢様方 |
睦 |
103_029 |
あたしたちはいいから、行ってあげて |
巽 |
104_021 |
では、ご夕食までゆるりとお過ごしください |
巽は綺麗に一礼し、去っていく |
円と睦はベッドに乗りあがると向かい合う |
円 |
105_030 |
で、どうする、むっちゃん? ホテルには帰れないって連絡したけど、暇だよね。……探索しに行く? |
睦 |
106_030 |
円が行きたいだけでしょ |
円 |
107_031 |
行きたい! だってお屋敷だよ? 書斎とか、応接間とか、実験室とか! あるかもしれないんだよ? |
睦 |
108_031 |
はいはい。判ったから。でもその前に、この部屋を見ておかないと |
円 |
109_032 |
えー。普通の部屋だよ? 掃除されてて綺麗だし、ベッド、机、クローゼットは(開ける)ほほぅ! ガウンだ! ねぇむっちゃん、ガウンがあるよ! |
睦 |
110_032 |
着るの? 円の身長じゃ裾引きずると思うけど |
円 |
111_033 |
夢くらい、見たって、いいじゃんか! いじわる! |
睦 |
112_033 |
本当のことでしょ。(ベッドの枕元にある小さな本を手に取る)……これは、聖書? |
円 |
113_034 |
あ、それ知ってる。ホテルにある、持って帰っていい本でしょ? |
睦 |
114_034 |
ここはホテルじゃないから。そもそもホテルに聖書があるのは配布や、自殺防止のためで |
円 |
115_035 |
え!? ホテルで自殺するの? なんで!! |
睦 |
116_035 |
知るわけないでしょ |
円 |
117_036 |
そっかぁ。面白いこと書いてる? |
睦 |
118_036 |
聖書になにを求めてるの(本を開くと紙が落ちてくる) |
円 |
119_037 |
ん? むっちゃん、本からなにか落ちたよ。あ、判った、暗号だ! |
睦 |
120_037 |
? ……本の切れ端? 白紙のようだけど |
円 |
121_038 |
なんだ、ざーんねん |
睦 |
122_038 |
じゃ、探索に行こうか? |
円 |
123_039 |
待ってましたぁ! |