役名 |
番号 |
台詞 |
○回想(学校) |
《SE》回想Shortbridge25-1 |
放課後の教室 |
星宮と藤堂は二人だけで教室に残っている |
《BGM》STR |
星宮 |
01_01 |
私の病気、よくならないんだって。卒業するまで、もたないって |
藤堂 |
02_01 |
そんな……どうにかならないの?最先端の治療を受けるとか! |
星宮 |
03_02 |
そんなお金、ないよ。お母さんたちには、これ以上お金で迷惑かけたくないし。……学校もやめる |
藤堂 |
04_02 |
やめるって……。(怒り)なんでそんな大事なこと、あたしに相談してくれないの!?順子、あたしの恋人でしょ?なんで―― |
相手に怒っても仕方ないことだとは分かっていても、星宮は強く言い返す |
それは、いずれ死ぬと知ったことに恐怖する自分を隠すためでもあった |
星宮 |
05_03 |
相談したって!どうにもならないもん! |
藤堂 |
06_03 |
(星宮が大声を出すのをはじめて見て、どうしていいか分からない)……順子 |
星宮 |
07_04 |
理沙ちゃんに相談しても、私の病気、治らないよ。お金だって増やせない。なにもできないのに、相談したって! |
藤堂 |
08_04 |
っ! |
星宮の頬が藤堂によって叩かれ、よろけて机にぶつかる |
《SE》頬を叩く |
《SE》机にぶつかる |
叩かれた頬を触ると確かに腫れていて、そこだけ熱を持っている |
星宮 |
09_05 |
っぁ……いたい |
藤堂 |
10_05 |
(肩を振るわせ、押し殺した声でボソリと)ふざけないで |
星宮 |
11_06 |
(呆然と)理沙ちゃん |
藤堂 |
12_06 |
(大きく)ふざけないでよ!!確かに、あたしにはなにもできない。病気だって治せないし、大金だって用意できない。でも!……好きな人の心配もさせてもらえないの? |
星宮 |
13_07 |
(最初は言い募るように、最後は尻すぼみに)だって私、死んじゃう、から……別れようって、思って |
藤堂 |
14_07 |
本気で言ってんの!? |
星宮 |
15_08 |
……うん |
藤堂 |
16_08 |
(ため息)あたしの気持ちは無視? |
星宮 |
17_09 |
ごめんね |
藤堂 |
18_09 |
……許さない |
星宮 |
19_10 |
あ、の |
藤堂 |
20_10 |
絶対、許さないから!※この「許さない」は、そんな最後は認めないと言う意味だが、順子にはお前を許さないという意味で伝わる |
藤堂が走って出て行く |
|
《SE》走る 木床 |
それを見つめるしかできない星宮は佇んだままだった |
《BGM》 DWN |
○商店街 |
《SE》道路 |
《SE》コンクリ 歩く ×2 |
やはり手を繋いで歩いている星宮と朱莉 |
朱莉 |
21_01 |
喧嘩、した。恋人と? |
星宮 |
22_11 |
うん。(苦笑)朱莉ちゃんは、私が女の子と恋人だって聞いても驚かないんだ |
朱莉 |
23_02 |
好きの対象が異性である必要、ない |
星宮 |
24_12 |
そっか、朱莉ちゃんはお星さまだったね。お星さまって性別ってあるの? |
朱莉 |
25_03 |
ない。たぶん? |
星宮 |
26_13 |
いいなぁ。(少し悲し気に)……どうして私、女の子が好きなんだろう |
朱莉 |
27_04 |
女の子が女の子好きは、なぜ駄目? |
星宮 |
28_14 |
だっておかしいよ |
朱莉 |
29_05 |
? 分からない。なにが駄目? |
星宮 |
30_15 |
なにって。えっと、ほら、他の人に紹介できないし、白い目で見られるし、気持ち悪いって……言われる。友達だって作れないし |
朱莉 |
31_06 |
? 分からない。ごめん |
星宮 |
32_16 |
謝らなくていいんだよ! 私がおかしいだけで |
朱莉 |
33_07 |
星宮、どこもおかしくない |
星宮 |
34_17 |
……私、おかしくない? |
同性愛は歪だと思っている順子は、おかしくないと言われて目を瞬かせる |
そんなことはない、異性を愛するのが正しいと脳が言ってくるが、朱莉が強く頷いて、おかしくないと言う |
その言葉が泣きたいほどに嬉しかった |
朱莉 |
35_08 |
(頷く)ん、おかしなところない。大丈夫。自分、星宮の友達 |
星宮 |
36_18 |
(笑おうとして失敗)うん、ありがとう。(少し泣きそう)そっか、私、おかしくないんだ |
朱莉 |
37_09 |
ない |
星宮 |
38_19 |
うん、(泣きそうなので、顔が見られないようにとしゃがみこんでしまう)ありがとう |
《SE》しゃがむ 布 |
朱莉 |
39_10 |
星宮、藤堂と仲直り、したい? |
星宮 |
40_20 |
……できないよ |
朱莉 |
41_11 |
星宮、違う。星宮は仲直りしたい? |
星宮 |
42_21 |
私は…… |
朱莉が星宮の頬をつかんで上を向かせる |
朱莉 |
43_12 |
星宮が望むこと叶える、それが自分 |
星宮 |
44_22 |
朱莉ちゃん、優しいね。ありがとう、その気持ちだけで十分、嬉しいよ |
朱莉 |
45_13 |
星宮、違う |
星宮 |
46_23 |
違うって |
朱莉 |
47_14 |
今の感情、嬉しいじゃない。それは、悲しい |
星宮の目元に触れた朱莉の指は、少し濡れていた |
○病院 |
《SE》病院のガヤ |
遠くから病院内の人の声が聞こえてくる |
《SE》呼び音 ぽん、とかいう音のやつ |
スタッフ |
48_01 |
中村さん、中村雄二(なかむらゆうじ)さん、お待たせしました1番に入ってください |
子供 |
49_01 |
ねぇねぇアイス買っていい? アイスー |
親 |
50_01 |
注射、いい子で頑張ったらね |
子供 |
51_02 |
うえー、注射痛いからヤだー |
《SE》走る |
スタッフ |
52_02 |
おーい、廊下は走っちゃだめだよ? |
親 |
53_02 |
あ、すみません。こら、待ちなさい! |
《SE》扉を閉じる ※ここで廊下の音はカット |
《SE》歩く |
《SE》椅子に座る |
《SE》カルテを捲る |
母はカルテを見る医者をじっと見ている |
呼び出されたときからなにか、よくないことを言われると気づいていたが、内容までは聞いていない |
医者 |
54_01 |
(ため息)お母さん残念ですが、お嬢さんは、この冬を越すことはできないでしょう |
母 |
55_01 |
(告げられた言葉が信じられず小さく呟く)そんな……。(大きく)だって退院して、元気に歩き回ってるんですよ? |
椅子から立ち上がってしまう母 |
《SE》椅子引く |
医者 |
56_02 |
それが不思議なんですよ。あの病気になって歩き回れるなんて。本当なら激痛でのた打ち回るのに |
母 |
57_02 |
(震える声で、そうだと言ってほしい気持ちで)病気が治ったから、歩けるようになったんじゃないんですか? |
医者 |
58_03 |
いいえ。病気は進行しています。そろそろステージ3に入るでしょう |
母 |
59_03 |
いまあんなに元気なんですよ!! |
医者 |
60_04 |
……お母さん、お辛いでしょうが検査結果は覆りません |
母 |
61_04 |
そんな…… |
力なく項垂れる母 |
医者 |
62_05 |
順子さんについて、覚悟だけはしておいてください |
母 |
63_05 |
治らないなら、どうして元気になったりしたの! |
医者 |
64_06 |
……お力になれず、申し訳ありません |
○コンビニ前 |
《SE》道路 |
星宮をコンビニ前まで引っ張ってくる朱莉 |
星宮はつれてこられるが、コンビニに入るのは渋る |
朱莉 |
65_15 |
星宮、コンビニ、行く |
星宮 |
66_24 |
ま、待って朱莉ちゃん、ほら、まずは深呼吸を |
朱莉 |
67_16 |
深呼吸はさっき5回した |
星宮 |
68_25 |
じゃ、じゃあ、手のひらに |
朱莉 |
69_17 |
人の字を書いて飲み込むのは8回した |
星宮 |
70_26 |
だ、だって、やっぱり会えないよ。あんな風に怒った理沙ちゃん、初めてだったし |
渋る星宮に朱莉の表情が曇る |
朱莉 |
71_18 |
……星宮、時間は無限じゃない |
星宮 |
72_27 |
分かってるよ。私の命が長くないことは……だから、お別れしたの |
朱莉 |
73_19 |
望んだ別れ? |
星宮 |
74_28 |
違うけど |
朱莉 |
75_20 |
別れて、星宮は嬉しくなったり楽しくなったりした? |
星宮 |
76_29 |
……するはずないよ。だって、ずっと好きだったのに |
朱莉 |
77_21 |
いまは? |
星宮 |
78_30 |
いまは……今でも、ずっと私―― |
藤堂が掃除のためにコンビニから出てくる |
順子を見ると驚いて、病気が治ったのかと心配して駆け寄ってくる |
《SE》コンビニの自働ドア 開く |
《SE》駆け寄ってくる |
藤堂 |
79_11 |
順子? あんたどうしてここに! |
星宮 |
80_31 |
あ、あ……ご、ごめんね! やっぱり無理 |
星宮が逃げていく |
《SE》走っていく |
藤堂 |
81_12 |
え? なに? (安堵して苦笑)順子、元気になったの? あんなに走って |
朱莉 |
82_22 |
(青ざめる)……まずい。藤堂! 星宮、探す |
藤堂 |
83_13 |
は? あんた誰 |
朱莉 |
84_23 |
自分、朱莉。星宮、自分から離れると痛み感じる! |
藤堂 |
85_14 |
どういうこと? |
朱莉 |
86_24 |
理由の時間、ない! |
朱莉が走り出す |
《SE》走っていく |
藤堂 |
87_15 |
あー? もう、バイトの途中だってのに |
《SE》掃除道具 捨てる |
《SE》コンビニの自働ドア 開く |
藤堂 |
88_16 |
(店内の店長に向かって)店長ー、ちょっと出かけてきます! |
店長 |
89_01 |
はぁあ!? なに言って |
藤堂 |
90_17 |
緊急事態なんで! |
藤堂も走り出す |
《SE》走る |
店長 |
91_02 |
おいこら藤堂、待てお前どこに行く!! |