たいむとりっぷ 肆

 出演キャスト様
キャラ名 台詞数
真田 23
氷室 71
猿飛 10
伊達 16
片倉 36


役名 番号 台詞
 シーン4
※『』はモノローグです
○真田の隠れ屋敷
真田 001_001 あら、お目覚めかしら
氷室 002_001 『目が覚めたわたしの前にいたのは真田幸村さん。おかしい。昨日は自室で寝たはずなのに』
真田 003_002 なぜここに? という顔をなさっていますわね。ちょっとさらってきましたの
氷室 004_002 大胆に誘拐宣言ですか!?
真田 005_003 だぁって、そうでもしないと政宗があなたとお話させてくれそうにありませんもの
氷室 006_003 えっと、それで、ここはどこでしょうか
真田 007_004 ここは真田の隠れ屋敷ですわ
氷室 008_004 わたしとお話したいって、なにについてでしょう
真田 009_005 あら、見た目によらず、せっかちですのね。いいですわ、わたくしも無駄な会話をするつもりはありませんから。佐助にあなたのことを調査させましたの
氷室 010_005 わたしのことを?
真田 011_006 結果はなにも分からずじまい! 仕方がないので本人に直接お尋ねしようかと思いまして
猿飛 012_001 心配しないでください。伊達さまへはご連絡しております
氷室 013_006 え!? 政宗さま、いいよって言ったんですか!?
猿飛 014_002 いいえ、激怒しておられました
真田 015_007 こんな小狸を取られて怒るだなんて、政宗も趣味が悪いですわ
猿飛 016_003 まったくです
氷室 017_007 あの、わたしは小狸じゃなくて、氷室――
真田 018_008 お黙りなさい。あなたの名など小狸で十分です。さぁ、吐いてもらいましょうか
氷室 019_008 な、なにをでしょうか
真田 020_009 あなたはなにが目的でなぜ政宗に近づきましたの? 政宗の傍にいて、なにをするおつもりかしら
氷室 021_009 崖から落ちて帰る場所がないので、お屋敷で働かせてもらってるだけで
真田 022_010 見ず知らずのあなたを政宗が保護する理由はなんです? 政宗になんの利があるというのです
氷室 023_010 助ける利点……は、ないですけど
真田 024_011 ならばなぜ、捨てぬのです? 見たところ戦にも出られぬ様子。あなたにどんな利用価値があるというのです?
氷室 025_011 『確かに、利用価値なんてない。善意で助けてもらって、働かせてもらってるだけで』
猿飛 026_004 この者は未来から来たと伊達さまに嘯(うそぶ)いているようです
真田 027_012 まあ! まさかあなた、未来を教えると言って政宗に取り入っているわけではないでしょうね!
氷室 028_012 違います! 未来からきたって言うのは本当です! たぶん
真田 029_013 本当なのか、たぶんなのか、どちらなのです!
氷室 030_013 だ、だって、分からないんです。目が覚めたら知らない場所にいて、政宗さまが助けてくれて
真田 031_014 目覚めたのなら元いた場所にお戻りなさいな
氷室 032_014 戻れないんです。どうやって戻ればいいか分からなくて
真田 033_015 はぁ……あなたの話を信じる証拠はどこにありますの?
氷室 034_015 証拠は、ないです
真田 035_016 ふうん? ……ああ、分かりましたわ。政宗はあなたが物珍しいから手元に置いているのですね
猿飛 036_005 さすがは伊達さま、真新しいものがお好きでいらっしゃる
真田 037_017 ええ、そうでしたわね。政宗は新しいものが好き、斬新なものが好き、ええそうですわ。ならば問題ないですわね
氷室 038_016 えっと、どういう意味でしょうか
真田 039_018 あなたなど、すぐに飽きられて捨てられるということですわ
氷室 040_017 捨てられる?
真田 041_019 今は新しい玩具に夢中かもしれませんけど。利用価値もない、役にも立たない人間を傍に置く理由などありまして? 小動物のように愛らしければ愛玩用にもできますけれど
猿飛 042_006 この娘では役不足かと
真田 043_020 まったくですわ! ふふふ、ああ、疑問が解決できて胸がすっとしましたわ
猿飛 044_007 幸村さまが喜ばれている。お前も喜べ
氷室 045_018 ええ!? あ、う、うわーい?
真田 046_021 小狸、せいぜい政宗に飽きられないようにしておくことですわね
猿飛 047_008 ! 幸村さま、伊達さまが到着されたようです
真田 048_022 まぁ、政宗がわたくしに会いに!! では挨拶してきましょう。この槍、久しく使っていませんもの
氷室 049_019 待ってください! どこに行くんです。政宗さまを傷つけるなら
猿飛 050_009 お前は黙ってみていろ。幸村さまの邪魔をするな。どうせなにもできないのだから
真田 051_023 腕が鳴りますわ。さ、参りますよ、佐助
猿飛 052_010 お供いたします、幸村さま
 真田と猿飛は出て行く
氷室 053_020 そりゃ、なにもできないし、なんの役にもたたないけど……さらわれて、助けに来てもらっちゃってるし……なんでこうなるのかなぁ……ああもう泣きそう。けど泣かないよ。絶対、泣かないっ!!
 しばらくして伊達がくる
伊達 054_001 ここか! くそ鍵がかかっている
 伊達が鍵を壊して入ってくる
伊達 055_002 つむぎ、無事か!?
氷室 056_021 政宗さま!
伊達 057_003 すまない、危険な目に合わせたな。大事ないか?
氷室 058_022 『利用価値のない私を、政宗さまが傍においてくれる理由はなんだろう』
伊達 059_004 まさか屋敷からさらうとは思っていなくてな
氷室 060_023 『わたし、あのお城にいていいのかな』
伊達 061_005 どうした? けがをしたのか? どこか痛むか?
氷室 062_024 あ、いえ、わたしは大丈夫です。政宗さまこそ、怪我なさったんですか?
伊達 063_006 けが? していないが
氷室 064_025 でも血が頬に
伊達 065_007 ああ、歩兵を蹴散らしたときについたのだろう
氷室 066_026 え? ……人を斬ったんですか?
伊達 067_008 斬らなければ、ここに来れないぞ?
氷室 068_027 『ここは、人を簡単に斬ったりする場所なんだ。そうだ、戦国時代なんだから……』
 片倉も駆けつけてくる
片倉 069_001 政宗さま、敵はすべて追い払いました。もう大丈夫です
氷室 070_028 片倉さん
片倉 071_002 まったく貴様は、政宗さまに迷惑をかけることしかできんのか! みすみすさらわれよって
氷室 072_029 ごめんなさい
片倉 073_003 反省するだけなら――
伊達 074_009 小十郎! 此度のことは我が城の警備に欠陥があるためにおきたことだ
氷室 075_030 ごめんなさい、わたし
伊達 076_010 ……帰るぞ。つむぎが見つかった以上、ここにいる必要はない
片倉 077_004 了解しました。馬を回してきます
 片倉が去る
伊達 078_011 つむぎ、立てるか?
氷室 079_031 た、立てます! うわ!? 
伊達 080_012 急に立つやつがあるか! まったく、こけるつもりなのか?
氷室 081_032 『こけそうなわたしの手を取ってくれた政宗さまの手は血で赤い。――怖いって思っちゃ駄目』
氷室 082_033 ごめんなさい
伊達 083_013 謝罪の言葉が聞きたいわけじゃない
氷室 084_034 ご――うぅ
伊達 085_014 つむぎ、どうしたんだ
氷室 086_035 『怖くなんかない。政宗さまは優しい人だって知ってるから。でもわたしがお城にいなかったら、政宗さまの手が汚れることなんてなかったんだ。真田さんのところの誰かが傷つくこともなかった』
伊達 087_015 つむぎ?
氷室 088_036 『飽きたら捨てられる。そのいつかに怯えるくらいなら、わたしは』
伊達 089_016 城に帰るぞ
氷室 090_037 『わたしが、帰る場所は……』
 夜 部屋
氷室 091_038 『お城に帰ると布団に押し込められた。政宗さまは何度か来てくれたけど、お話できないままで……』
片倉 092_005 つむぎ、入るぞ
氷室 093_039 あ、片倉さん
片倉 094_006 調子はどうだ
氷室 095_040 けがしたわけでも、病気をしてるわけでもないんです、大丈夫です
片倉 096_007 ああ、その、だな。先ほどはすまなかった、つい責めるような物言いをしてしまった
氷室 097_041 いえ、本当のことですから
片倉 098_008 ……城の警護を強化することにした。もう真田の忍が入り込むことはない、安心するといい
氷室 099_042 はい。あの、片倉さん。真田さんってどんな人か、聞いてもいいですか?
片倉 100_009 真田さまか? 自分が知ることは少ないが、それでもいいなら
氷室 101_043 お願いします
片倉 102_010 真田家は元は武田に仕えていた。しかし武田は織田に滅ぼされた。そして織田が天下を統一すると誰もが思っていた
氷室 103_044 それ知ってます。でも信長さまって本能寺で明智光秀に暗殺されるんですよね
片倉 104_011 そうだ。そして織田のあと、徳川、北条、上杉、名だたる武将が己の天下を目指していたが、天が味方をしたのは豊臣だった。その頃、真田さまは人質だったと聞く
氷室 105_045 人質?!
片倉 106_012 そう珍しいことではない
氷室 107_046 でも、人質ってことは、なにか起きたら責任取らされるんですよね。最悪殺されるとか
片倉 108_013 最悪もなにも、少しきな臭い噂が立つだけで首を飛ばされる。捨て駒のようなものだ
氷室 109_047 そんな
片倉 110_014 真田さまはそんな中を勝ち進んできた。己の才能一つでな。そして政宗さまに出会ったのだ。同年代だから、珍しくもあったのだろう。互いに野心を抱き豊臣を見上げる様子は楽しげでもあった
氷室 111_048 今は違うんですか?
片倉 112_015 豊臣が完全に天下を取ってからは違うな。殊更、政宗さまに執着するようになった
氷室 113_049 どうして
片倉 114_016 分からん。最初は伊達の領土が欲しいのかとも考えていたのだが、違うようだしな
氷室 115_050 政宗さまが欲しい?
片倉 116_017 自分にはそう見える。あの執着は異常だ。幸か不幸か貴様は政宗さまの傍にいることを許された。だからつむぎ、用心していろ
氷室 117_051 ……護身術とか、習えますか?
片倉 118_018 貴様がそれをまことに望み、政宗さまが頷けばな
氷室 119_052 じゃあわたし、出て行ったほうがいいですよね? 政宗さまのご迷惑になるから
片倉 120_019 は?
氷室 121_053 えっと……その……政宗さま……怒ってますよね
氷室 122_054 『助けてもらったのに、血が怖くて帰る途中も会話もしなかったし』
片倉 123_020 なにを言っている?
氷室 124_055 だって勝手にさらわれて、迷惑かけちゃって
片倉 125_021 はぁ、自分はしらん。……これを預かってきた
氷室 126_056 お手紙ですか?
片倉 127_022 政宗さまからだ
氷室 128_057 政宗さまから!?
 手紙をあけて読もうとする氷室
氷室 129_058 ……か、片倉さぁん
片倉 130_023 な、なんだ、その気色の悪い声は
氷室 131_059 達筆すぎて読めません
片倉 132_024 はぁ!? 貴様、まさか字が読めんのか?
氷室 133_060 わたしの知ってる字と違うんです。あの、なんて書いてあるか読んでもらうことは
片倉 134_025 できん。主の手紙を読むなど、あり得ん
氷室 135_061 ですよ、ね。せっかくお手紙もらったのに
片倉 136_026 政宗さまに字を習うといい
氷室 137_062 だ、駄目です!
片倉 138_027 なに?
氷室 139_063 字を習うのはいいんですけど。政宗さまはお忙しいから、他の人に――片倉さん!
片倉 140_028 断る
氷室 141_064 そんなこと言わずに! このお手紙、読みたいんです!
片倉 142_029 ならば素直に政宗さまに習え
氷室 143_065 いやです! は? まさか文字も読めないのか? って顔されたら心が折れます!
片倉 144_030 さっき自分もしただろう、まさにそれを
氷室 145_066 政宗さまにされると立ち直れません!!
片倉 146_031 ああくそ、政宗さまの元に行き、音読してもらえばいいだろう
氷室 147_067 そ、れは、そう! お仕事があるっていつも片倉さん言うじゃないですか。そんな中、私に時間を割いちゃったら、政宗さまの時間がなくなっちゃいますし
片倉 148_032 お気になさらないと思うが
氷室 149_068 私が気にするんです!
片倉 150_033 ……つむぎ、真田さまになにを吹き込まれたかは知らんが、あれこれと想像するな。それは無駄なことだ
氷室 151_069 うう、でも
片倉 152_034 ここでべそをかいて泣きごとを言ったところで事態は好転しない
氷室 153_070 分かってるんですけど
片倉 154_035 分かっているならしゃきっとしろ!
氷室 155_071 ううう、片倉さんの意地悪ですー! そんなんじゃ身長縮むんですからね!
片倉 156_036 縮むか馬鹿者!!


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