たいむとりっぷ 壱

 出演キャスト様
キャラ名 台詞数
氷室 77
伊達 58
片倉 33


役名 番号 台詞
※『』はモノローグです
氷室 001_001 『今日は大学の友達と卒業旅行! ご飯と温泉を楽しみに電車を乗り継いで、やーっとたどり着いた山の奥! うきうき気分で木漏れ日が降り注ぐ中を散策……してたのに。雨に降られて、みんなとはぐれて、焦って駆け出したのがいけなかったんだと思う。崖から落ちたわたしは背中をしたたかに打って意識を手放した』
○部屋(夜)
 氷室は布団で寝ている
 彼女の傍には2人の女性
氷室 002_002 (意識浮上中)う……うぅ
伊達 003_001 お、気がついたか?
氷室 004_003 (意識浮上中)うぅん
伊達 005_002 まだか
片倉 006_001 政宗さま、もうよいでしょう。じきその女子(おなご)も目覚めます。ご公務へお戻りを
伊達 007_003 小十郎、おまえはどうしてそう物事を焦る。じき目が覚めるのなら薬師(くすし)を呼べ
片倉 008_002 傍付(そばづ)きにさせます。《手をたたく》おい誰か!
伊達 009_004 しー! けが人の傍で大声を出すやつがあるか、ばか者
片倉 010_003 も、もうしわけなく
氷室 011_004 『わたしが目を覚ましたのは布団の中で、傍では眼帯の女性と小柄な女性が話をしている。見たこともない部屋。どこだろう、ここ』
氷室 012_005 あのー
片倉 013_004 む、気がづいたか
伊達 014_005 小十郎の大声で起きたんだ、なあ
氷室 015_006 え、えっと。あの、どちらさまですか?
片倉 016_005 無礼な。名を尋ねるならばまず己から――
伊達 017_006 私の名は伊達政宗
片倉 018_006 政宗さまぁ
伊達 019_007 やかましい。で、そっちは?
氷室 020_007 氷室つむぎです
伊達 021_008 つむぎか、よい名だな。こっちの小さいのは小十郎だ
片倉 022_007 小さいは余計です。片倉小十郎と申す
氷室 023_008 伊達政宗さんに、片倉小十郎さんですね……ん? だ、伊達政宗!?
伊達 024_009 お、私を知っているのか? いやぁ、有名なのは気分がいいな。が、いきなり立つと危ないぞ。おまえは崖の下で倒れていたんだ
氷室 025_009 崖の下で?
伊達 026_010 鷹狩りの帰りに見つけてな。崖から落ちたんだろう。けがもしている。服は悪いが着替えさせてもらった。なにせ雨水を含んでいたからな
氷室 027_010 わたし、崖から足を滑らせて……あの、わたしのほかに誰かいませんでしたか?
片倉 028_008 崖下にいたのは貴様だけだ
氷室 029_011 そうなんですか。えっと、その、荷物とかは
伊達 030_011 私が見つけたとき、おまえはなにも持っていなかった。少しは探したが、この通り片目でね
片倉 031_009 命があっただけよいと思え
氷室 032_012 そうですよね……
氷室 033_013 『そうだよね、死ななかっただけマシだよね。でもどうしよう。ここ、わたしがいた場所……というか時代じゃないよね。伊達政宗って、確か戦国時代の武将で……男の人だった気がするんだけど』
氷室 034_014 つ、つかぬことをお聞きしますが、いまは西暦何年ですか?
伊達 035_012 西暦は分からんが、いまは文禄(ぶんろく)3年だ
氷室 036_015 ぶんろく!? ってなんです?
片倉 037_010 元号(げんごう)の一つだ
氷室 038_016 あーじゃあ、えっと、じゃあ、このごろ起きたイベントとかは?
伊達 039_013 いべんと? それはなんだ、つむぎ
氷室 040_017 大きな出来事とか、催し物のことです
片倉 041_011 豊臣が春に吉野で花見の宴を催していたが
氷室 042_018 ……その豊臣ってもしかして、秀吉ですか?
伊達 043_014 ああ、秀吉だな。まさか、つむぎは太閤の知り合いか?
氷室 044_019 いえまったく! お名前を知ってるだけです
伊達 045_015 そうか。まぁ今日はもう休め。明日、おまえが倒れていた崖下に連れて行ってやろう
片倉 046_012 明日は明日のご公務があります。今日の分も、たまっております!
伊達 047_016 細かいことを気にするな小十郎、縮むぞ?
片倉 048_013 細かくありませぬ!! あと縮みませぬ!
氷室 049_020 えっと、あの、伊達、さま
伊達 050_017 政宗で構わない。つむぎは私が助けた。だから私が面倒を見る、いいな小十郎
片倉 051_014 ……かしこまりました
伊達 052_018 じゃあ明日な、つむぎ。よく寝るんだぞ
 伊達と片倉が去る
氷室 053_021 これ、夢じゃないよね。頬抓ったら……痛い。え、なんで? 戦国時代? しかも伊達政宗が女の人だし。どうなってるの? ……ここでじっとしてていいのかな。でもできることないし、体痛いし……よし! 寝よう
○部屋(朝)
氷室 054_022 うぅう、眠い。そしてやっぱり、体が痛いぃ。……夢じゃ、ないんだ
氷室 055_023 『崖から落ちたら伊達政宗がいる時代だった! なんて笑えないよぉ』
片倉 056_015 つむぎ、いるか
氷室 057_024 片倉さん。はい、います!
片倉 058_016 失礼する
 部屋に入ってくる片倉
片倉 059_017 なんだその顔は、仕度(したく)ができたのなら政宗さまが崖下に連れて行ってくださる
氷室 060_025 あの、片倉さん。政宗さまって独眼竜ですか?
片倉 061_018 知っているのか!! うむうむ、やはり政宗さまの武勇は各地に広く轟(とどろ)いているのだな
氷室 062_026 確かに、未来でも有名ですしね
片倉 063_019 貴様はミライという土地から来たのか? それはどこにある
氷室 064_027 ええっと、たぶん、すごく遠くに?
片倉 065_020 なんだ、その曖昧な答えは
氷室 066_028 ごめんなさい。でも本当に分からないんです
片倉 067_021 あ、いや、そう落ち込むな。……そのだな、自分は物言いがきついかも知れんが、気にするな
氷室 068_029 はい。……えっとぉ、その〜、あ! このお城、すごく広いですね
片倉 069_022 当たり前だろう。政宗さまは伊達家、17代目当主なのだから
氷室 070_030 はい片倉さん、質問したいです!
片倉 071_023 なんだ
氷室 072_031 ここって、どこら辺にあるんですか?
片倉 073_024 岩出山城(いわでやまじょう)か? 陸奥国(むつのくに)の玉造郡(たまつくりぐん)で――
氷室 074_032 わー、待ってください! 地図、地図ないですか?
片倉 075_025 あるわけがないだろう
氷室 076_033 じゃ、じゃあ。あ! 紙と墨で日本地図を書いて……
 紙に日本地図っぽいものを書く氷室
氷室 077_034 こんなかな。これのどこら辺ですか?
片倉 078_026 貴様、面妖なことを。これは出羽国(でわのくに)と陸奥国か? ここらへんだな
氷室 079_035 うーん、宮城かなぁ
片倉 080_027 貴様はどのあたりから来たのだ?
氷室 081_036 たぶん、ここらへんでしょうか
片倉 082_028 江戸か。徳川の領土だな
氷室 083_037 徳川って、徳川家康ですか?
片倉 084_029 ……貴様の家は徳川に仕えているか?
氷室 085_038 あはは、仕えるなんて、そんなの無理ですよ
片倉 086_030 貴様が徳川の者でないと、証明できるか?
氷室 087_039 え、えっと、証明……できませんけど。どうして証明しないといけないんです?
片倉 088_031 政宗さまは豊臣勢だからだ
氷室 089_040 豊臣勢?
伊達 090_019 秀吉に味方をしているということだ
 ひょっこり現れる伊達
氷室 091_041 わ? あ、政宗さま、おはようございます
伊達 092_020 ああおはよう。まったく、いつまで経っても来ないからと見にきてみれば、小十郎と楽しげに
片倉 093_032 自分は楽しくありませぬ
伊達 094_021 話があるなら歩きながら聞こう。行くぞ、つむぎ
氷室 095_042 はい! ……あれ? 片倉さんは来ないんですか?
片倉 096_033 自分は政宗さまに押し付けられた仕事がある。政宗さま、けっして危険なことはなさらぬよう!
伊達 097_022 はいはい。気をつけるさ
○厩
伊達 098_023 そう言えば、つむぎ。つむぎは馬に乗れるのか?
氷室 099_043 乗ったことなんてないですよ!?
伊達 100_024 ふうむ、まぁ、乗ってみればいいか。ほれ
氷室 101_044 わ、わたし、歩いていきますから
伊達 102_025 崖まで遠くはないが、近場でもない。歩いていっては日が暮れる
氷室 103_045 でも本当に、馬なんて乗ったことなくて
伊達 104_026 やってみればどうにかなるものだ。引き上げるぞ、よっと
 伊達が氷室を馬上に引き上げる
氷室 105_046 みぎゃ!?!
伊達 106_027 なんだその色気のない悲鳴は。よし、しっかり捕まっていろ
氷室 107_047 色気なんて要らな――ちょ、政宗さま。まさか
伊達 108_028 走るぞ、っはぁ!!
 馬で駆け出す伊達
氷室 109_048 ひぁあああ! し、死ぬ、死にます!!
伊達 110_029 大きな声が出るな、つむぎ。元気な証拠だ
氷室 111_049 ああぁあ、おろしてくださーいぃー!!
伊達 112_030 ははははは!!
○崖付近
伊達 113_031 ふうむ、ここからは歩くしかないな
氷室 114_050 お、お尻がいたい
伊達 115_032 初めてにしては上出来だな
氷室 116_051 政宗さま、ひどいですよ
伊達 117_033 だが馬上から見る景色は悪くないだろう?
氷室 118_052 景色を見る余裕なんてありませんでした
伊達 119_034 それは駄目だな。せっかくの景色を見ないなんて
氷室 120_053 政宗さま、ヤンチャだって言われません?
伊達 121_035 言われないな。小十郎以外には
氷室 122_054 言われてるじゃないですか!
伊達 123_036 細かいことを気にするな。さあ、歩くぞ
氷室 124_055 はぁあい
伊達 125_037 ――小十郎はどうだ。口煩くないか?
氷室 126_056 小十郎さんですか? いいえ、煩くないですよ。いろいろ教えてもらいました
伊達 127_038 そうか? 私は常々、もう少し静かにならんのかと思っているんだが
氷室 128_057 ふふふ、でも本当に静かになっちゃったら、寂しいんじゃないですか?
伊達 129_039 はは、かもな。さて、私が豊臣勢と聞いて、つむぎはどうする?
氷室 130_058 ? どうもしませんけど
伊達 131_040 おまえは徳川の者ではないのか?
氷室 132_059 違います。わたしがいたところ、江戸っていいましたっけ? そこは徳川さんが納めてるんですか? でも、わたしが住んでたところに徳川さんはいません
伊達 133_041 ? 徳川がいない江戸に住んでいたと?
氷室 134_060 信じてもらえないとは思うんですけど
伊達 135_042 ……北条氏が没したのち、太閤秀吉の天下がきた。そして徳川は豊臣の次に大きい勢力を持つ
氷室 136_061 そうなんですか
伊達 137_043 秀吉は農家の出だからな、徳川をはじめ、多くの武将が奴の天下を快く思っていない
氷室 138_062 じゃあ、徳川さんが秀吉に攻撃するんですか!?
氷室 139_063 『歴史だと徳川が江戸幕府を作るんだよね。秀吉は殺されたんだっけ? うーん、死んだ? 覚えてないなぁ』
伊達 140_044 そうなると、せっかくできた平定(へいてい)が壊れてしまうな
氷室 141_064 政宗さまは、戦が嫌いなんですか?
伊達 142_045 戦場は好きなんだが、民が犠牲になるのは喜べない。いまは秀吉の支配下の元、できる限り民が豊かに暮らせる方法を探している
氷室 143_065 素敵な頭首さまですね!
伊達 144_046 いずれ天下を奪い取ってやろうとも考えているぞ?
氷室 145_066 政宗さまが天下を取るなら、きっと素敵な時代になるんだろうなぁ
伊達 146_047 ……
氷室 147_067 政宗さま?
伊達 148_048 いやなんでもない。ああ、あのあたりだ、つむぎが倒れていたのは
氷室 149_068 ……川が増水してて、なにも見えませんね
伊達 150_049 雨が降ったからなぁ。あのまま捨て置けば溺死していだろう
氷室 151_069 助けてもらって本当にありがとうございました! 《崖を見上げる》うわ、高いところから落ちたんだ
伊達 152_050 傷が深くなくてよかったな
氷室 153_070 そうですね。政宗さまが鷹狩りをしてなかったらって思うとゾっとします
伊達 154_051 ……つむぎはこれからどうする? 家には帰れるか? 江戸なら送っていけるが、おまえのいた江戸には、徳川はいないんだろう?
氷室 155_071 ……家にはきっと、帰れないです
伊達 156_052 そうか。なら私の屋敷で働くか? 働き口ならある
氷室 157_072 いいんですか? こう言っちゃなんですけど、わたし、とても怪しいと思うんです
伊達 158_053 ああ、見慣れぬ衣をまとい、元号を知らず、徳川のいない江戸から来たという女。とても怪しいな
氷室 159_073 そんな女を置いていいんですか?
伊達 160_054 なに構わないさ。つむぎを傍においておけば退屈しそうにないからな
氷室 161_074 退屈しのぎって……政宗さま、小十郎さんに怒られますよ?
伊達 162_055 ははは、水かさが引いた頃にもう一度来てみよう。なにか残っているかもしれない
氷室 163_075 ……はい
伊達 164_056 そう気を落とすな。死ななかったのは御仏の導きだ。まだ生き、すべきことをせよと言われているのだ。いずれ望む場所に帰れる
氷室 165_076 本当に、帰れるでしょうか
伊達 166_057 ああ。生きていれば、なんとかなる。望みを捨てない限りな
氷室 167_077 そうですよね。はい、政宗さま。わたしを屋敷で働かせてください!
伊達 168_058 いい返事だ。気に入った!


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